(福島 香織:ジャーナリスト)
「中国のトランプ」といわれるほどの遠慮のない発言、放言で知られる、紅二代(親が革命の功労者)の実業家・任志強(じん・しきょう)は、今年(2020年)2月に習近平を「裸の皇帝」「道化」などと激しく批判し、宮廷クーデターを煽ったともとれる署名原稿を米国発の華字論文サイトに寄稿したことで、およそ半年にわたって身柄拘束されていた。9月22日、その任志強に、懲役18年という重い判決が言い渡された。
任志強は元中央規律検査委員会書記の王岐山の親友という極めて強い政治的バックがあり、これまでは習近平に批判的な態度をとっても党籍剥奪を免れていた。だが、ついに党籍剥奪どころか、懲役18年という69歳の老身にとっては無期懲役ともいえる重い判決を受けたのである。
中国政治の人治性を知る人間からすれば、これは相当激しい権力闘争が背景にあったと想像せざるを得ない。この任志強の判決によって、習近平は党内の紅二代グループと完全に対立したともいえるし、また実業界にも激震が走ったことだろう。
罪の重さは“宮廷クーデター”未遂に匹敵?
任志強が問われた罪状は4つ、汚職、収賄、公金横領、国有企業人員としての職権乱用である。