(福島 香織:ジャーナリスト)
中国に駐在していたオーストラリアメディアの特派員記者2人が中国・国家安全部に尋問を受けたため、オーストラリア大使館が彼らを保護し、中国から脱出させるという事件が先日起きた。
実は私もかつて新聞記者として北京に駐在していたときに、国家安全部から圧力を受けて、ちょっと怖い思いをした経験がある。「国家安全部」とは中国の情報機関であり対外諜報、対外防諜が主な任務だ。ここが動くということは、中国共産党政権が国家安全に関わる案件と判断したわけで、かなり深刻な事態といえる。
2人のオーストリア人記者が急遽大使館・総領事館に保護されて、中国を出国したのは当然の措置であった。これがどういうことかを、今回はよく考えてみたい。
オーストラリア人キャスター拘束が関係か
くだんの記者は、オーストラリア放送(ABC)のビル・バートルズ記者と、オーストラリアン・ファイナンシャル・レヴュー(AFR)のマイケル・スミス記者。9月8日午前に、2人はシドニー行き飛行機で中国を離れたという。
ニューヨーク・タイムズなどの報道を総合すると、北京駐在のバートルズ記者は9月3日夜、7人の国家安全部職員の自宅訪問を受け、出国禁止を言い渡され、後日取り調べを受けるよう要請された。バートルズはもともと、身の安全のために帰国するようオーストラリア大使館から忠告されており、9月4日に帰国する予定であったという。バートルズはすぐに大使館に電話し、事の次第を告げ、大使館の保護下に置かれた。6日、グラハム・フレッチャー大使とともに国家安全部に出頭して取り調べを受け、大使の交渉によって出国禁止令を解除してもらい、8日の出国がかなった。