ノロウイルスからIBSにかかる人も多数

 遺伝的な要因も関係します。双生児研究によると、IBSの一致率は二卵性の場合は8.4%ですが、一卵性の場合は17.2%と高くなります。これは、遺伝の関与が強いことを示しています。また、ストレスが発症に関わるので、うつや不安障害があるとIBSを発症しやすくなります。興味深いことに、下痢型のIBSには、役職が高く年収も高い人、つまり社会的なストレスが強い人に多いという報告もあります。

 さらに、感染性胃腸炎をきっかけに、治った後にIBSになってしまう人が意外と多いと考えられています。

 たとえば、冬に流行するノロウイルス感染症にかかったことがある人も多いと思います。ひどい嘔吐と下痢を繰り返しますが、1、2日すれば大抵の場合はスッキリ良くなります。しかし、ノロウイルスにかかった人は、かかっていない人に比べて、1年後にIBSになっている可能性が11倍に上がってしまうのです。
 
 患者数が多いという他にも問題なのは、IBSになると現実の生活にかなり支障が出る、ということです。時々症状が出るという程度であればいいですが、IBSの人の中には、前述したように「怖くて電車、飛行機等に乗れない」「どこに行くにしても、まずはトイレの位置を確認しないと行けない」という人も多くいます。

 ずっと不安な気持ちを抱えていることになれば、自然と外出自体が減ってしまいます。「QOL(Quality of life:生活の質)」が著しく低下してしまうのです。そして、この状態を放置しておくと、自殺率が高くなることも報告されています。

 IBSという病気は、実は思っている以上に注意が必要な問題なのです。