日本人の7〜8人にひとりが過敏性腸症候群

 排便の異常を起こすメカニズムを専門的に言うと、「運動機能異常」と「内臓知覚過敏」になります。どういうことかというと、脳がストレスを受けると、自律神経のバランスが崩れ、その結果、消化管の運動異常が起きるのです。過度に運動(収縮)すれば腹痛と下痢を起こし、運動がなく弛緩すれば便秘になります。また、ホルモンの影響で大腸の知覚過敏が起こり、腹痛を起こすこともあります。この2つが組み合わさって、排便の異常を起こすのです。

 IBSは下痢型、便秘型、混合型(下痢と便秘を繰り返す)、分類不能型の4つに分類されています。

 ストレスが原因でお腹の調子が悪くなるというと、「良くあることだし、大したことはない」と思う人もいるかもしれません。一昔前は、医師の間でさえ、排便の異常があったとしても大腸がんや潰瘍性大腸炎でなければ大した病気ではない、という偏見もありました。「大きな病気はありませんでした。良かったですね」「のんびり行きましょう」といったアドバイスにならないアドバイスをもらった人もいるかもしれません。

 しかしこのIBSが、実はしっかり対処しなければいけない病気だということが、徐々に認知されてきました。

 まず、患者数がとても多いのです。2011年の報告によれば日本人の有病率は13.5%と報告されています。なんと日本人の7、8人に1人はIBSなのです。電車で腹痛を起こし、駅のトイレに駆け込んだら満員だったという経験がある人も多いと思いますが、それもむべなるかな。多くの人が同じ症状で困っているのです。

 どういう人が、IBSになりやすいのでしょうか? 男性と女性を比べると、女性の方が1.6倍多いと報告されています。そして若い人に多く、加齢とともに減っていきます。