ウクライナ・キエフにある「ホロドモール犠牲者追悼国立博物館」内の様子(筆者撮影)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家)

 各国の大使館は、様々な役割を担っています。その中でも、近年SNSの普及により重要性を増している仕事が広報活動です。

 日本との歴史的つながりが少なく知名度が低いと言わざるを得ないジョージア(グルジア)のティムラズ臨時代理大使などは、大使館の公式アカウントだけでなく、個人としても積極的に発信し、日本でのジョージアの知名度を非常に高めています。

 ところが、逆に広報活動としてマイナス効果しかなさそうな発信をしている大使館も見受けられます。

 代表的なのは駐日ロシア大使館です。最近のロシア大使館のツイッターやフェイスブックでの情報発信には首をかしげざるを得ません。第2次世界大戦の終盤、ソ連が、日ソ中立条約の有効期限内であるにかかわらず、樺太や北方領土などに侵攻したことは、多くの日本人が事実として知っています。それにもかかわらず、その侵攻を賞賛するツイートをするなど、日本人の神経を逆なでするような書き込みを平気で行っているのです。

 ロシア大使館のフェイスブックではこんな具合です。

<1941年4月13日のソ日中立条約は、劇的な状況の変化、具体的には、軍事主義下の日本が、上記条約に反し、わが国と戦争状態にあるナチスドイツを支援したことにより発された、1945年4月5日付ソ連政府表明を根拠に破棄されています。この表明の正当性は、1948年11月4~12日に行われた東京裁判の資料ならびに国連憲章の相応する規定により、すべて確認されています。>


 筆者の周りでは、これをロシアの横暴、あるいは広報活動に対する無理解(無知)と捉えている人が多いようですが、私は少々違った見方をしています。

 SNS担当者は、相応の教養を持つエリートであり、広報活動の意義も理解しているはずです。事実、美しいロシアの風景をツイートするなど、好感の持てるツイートも見られます。それにもかかわらず、上記のように、広報としてマイナスにしかならないような内容がたびたび書き込まれます。