シリア化学兵器「捏造」の証拠とされた写真、実は映画撮影と判明

シリアの首都ダマスカス近郊ドゥーマで、負傷者を搬送する「ホワイト・ヘルメット」のメンバーら(2018年4月4日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / Zein Al RIFAI〔AFPBB News

 ロシアはシリアや東ウクライナで、流血を伴う現実の「戦争」を行っているが、軍隊を動かすそうした作戦と同時に、通信インフラへの攻撃やハッキング、あるいはフェイク情報による攪乱やプロパガンダによる宣伝戦など、広義の「情報戦」にも力を入れている。「軍事」と「情報戦」を作戦の両輪とするこの考えは、2014年にはロシアの正式な軍事ドクトリンに採用されたとみられており、「ハイブリッド戦」と呼ばれている。

 ハイブリッド戦の中でも、ロシアが非常に力を入れている分野が、メディアやSNSを駆使した心理戦で、それこそ謀略といっても過言ではない秘密工作である。ロシア政府の宣伝機関と呼んでいい各国営メディア、あるいはSNSへの組織的な情報発信工作によってフェイク情報やプロパガンダを西側社会に拡散し、ロシアに有利な世論に誘導しようというのだ。

 その工作は、2016年のアメリカ大統領選できわめて大規模に行われていたことがすでに露呈しているが、その後も健在で、最近もシリア紛争、あるいはイギリスでの元諜報員毒殺未遂事件などでも、非常に活発に行われた形跡がある。

「トロール」の威力に気づいたロシア

 米英仏によるシリア攻撃から一夜明けた4月14日、アメリカ国防総省は「過去24時間でロシアの“トロール”が20倍に急増した」と発表した。

 トロールとは、ネット上での議論を自らに有利なように誘導する目的で、主にSNSに恣意的に大量に偏向した情報を書き込む行為で、日本語のネット用語では「荒らし」と呼ばれている。SNSが発達した現代では、ネット世論が現実社会の世論に与える影響は大きく、トロールはそれなりに影響力があると考えられている。

 その威力にいち早く気づいたのがロシアだ。ロシアの情報機関はこのトロールを非常に大掛かりに行っており、世界中のSNSユーザーに、ロシアの情報操作とは分からないように偽装して、特定の論調に誘導する工作を行っている。