不動産政策の失敗以外にも、北朝鮮による文政権との対話拒否、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長はじめ革新系地方首長の相次ぐセクハラ疑惑、尹美香正義連元理事長の寄付金・政府補助金着服など革新系の人々の倫理性の問題、経済の悪化に伴う正規雇用の減少、特に青年層の失業増大など問題が山積しており、支持率回復の材料は見当たらない。

 韓国の歴代政権では、政権末期に支持率が下がると反日傾向を強めることが多かったが、積弊清算を旗印にした文政権は、直接反日には向かわず、あくまでも国内問題としてととどめている。そして、「不動産の価格高騰は政策の失敗ではなく過渡期の状況で必ず改善する、政権に対する批判は保守派すなわち親日派のでっち上げだ」と規定することで、自らに対する批判を回避しようとしている。

 文政権は積弊の清算と称して親日派排除を強め、親日派と保守系の政治家を同一視することで革新系による長期政権を目指している。

「政権に非はなく、批判は親日派の謀略」が文政権の逃げ口上

 文在寅大統領は、慰安婦問題の原則は「被害者中心主義」という。

 しかし、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)氏は5月7日、「尹美香にだまされた」「挺対協(正義連)に集まった寄付金は元慰安婦のために使用されていない」と暴露した。また、元慰安婦が共同生活を送る「ナヌムの家」でも寄付金の2%しか慰安婦のために使われなかった。慰安婦支援団体の行動はとても被害者中心主義とは言えない。

 数多くの疑惑が提起された尹美香氏は、「暴きたてられた曺国前長官を思い出す」として、不適切な会計処理こそ謝罪したものの、利権行為については認めていない。むしろ、保守派が不正疑惑をでっち上げ、自分を批判することによって慰安婦問題をうやむやにしようとする親日派の策略であるとして、国民の同情心に訴えかけ保守vs文派の陣営争いに転嫁しようとしている。

 そして、文在寅氏は、「慰安婦問題の大義は守られるべき」として、事実上正義連に対する過度な批判は抑制するよう求めるかのような発言をしており、この問題に関しては沈黙を維持することで、国民の記憶が薄れるのを待っているようである。

金元雄光復会会長の式典挨拶が「親日論争」の呼び水に

 光復会長である金元雄氏は、「李承晩(イ・スンマン)は親日派と結託した」「民族反逆者が作曲した歌を国家に定めた国は大韓民国だけだ」と主張し、「民族の未来の足を引っ張るのは親日に根を置き、分断に寄生して存在する勢力」、「韓国社会の確執構造は保守と進歩ではなく、『民族と反民族』だ」と述べた。

 李承晩大統領は朝鮮戦争の際、米国が日本軍を朝鮮半島に投入しようとすると、「日本軍が参戦するならば、日本軍からまずたたきのめす」と語った。また、電撃的に李承晩ラインを設定し、竹島の実行支配を固めるとともに、日本漁民を放逐した大統領だ。日本人には反日の代表格として知られている。

 それが金氏の手にかかると「親日派」扱いされてしまう。その理由は日本統治時代の官僚を一掃しなかったからと言われる。しかし大韓民国建国後の国家統治、経済活動、教育に実際に携わることができる経験者は日本統治時代に活動した人々である。それでも親日派を登用したとして非難する金氏と文政権に近い人々の親日観がいかに偏ったものか、これで分かるであろう。