アキュセラショックも「ほとんど気にせず」

──今、窪田製薬HDの売上高はゼロですよね。

窪田:ゼロです。窪田製薬HDに移行した直後は米国法人からの出向という形を取っていたので社員もゼロでした。

──売り上げも社員もゼロって何だという話ですね。

窪田:知らない人が見れば、フェイクかと思いますよね(笑)。ただ、2020年12月期第2四半期にNASAの開発受託収入が4000万円計上されるので、もうすぐゼロではなくなります。まあ、研究開発に投下している資金を考えれば、焼け石に水ではありますが・・・。

──加齢黄斑変性の開発に頓挫したときは、アキュセラに投資していた投資家の間で怨嗟の声がこだましました。実際、株価も暴落しましたし。やはりショックを受けましたか?

窪田:全く落ち込まなかったと言えば嘘になりますが、ほとんど気にしませんでした。先ほども申し上げたように、加齢黄斑変性の他にも、スターガルト病や糖尿病網膜症の新薬開発にエミクススタト塩酸塩が転用できるということは分かっていましたし、加齢黄斑変性の治療薬の開発に成功するかどうかは五分五分だと思っていましたから。

 「コップの水が半分しかないと考えるのか、半分もあると考えるのか」という言葉がありますが、私は「半分もある」と考える方の楽観主義者です。新薬開発の成功確率が3万分の1と言われていることを鑑みれば、1つの成功の前に2万9999回の失敗の山があるということです。悲観的な人であれば、目の前で積み上がる失敗の山を見て、成功にたどり着く前に気力を失ってしまうでしょう。

 第一打席は三振したけど、幸いなことに、まだ打席に立つチャンスは残っている。ならば、「次の打席でホームランを打とう」とすぐに切り替えました。仮に、臨床試験で安全性に問題が出ればアウトだと思っていましたが、安全性については問題がなかったので。やっぱり打席に立てるのがなによりですよ。

──新薬開発は元々ハイリスク・ハイリターンですからね。

窪田:今回の新型コロナワクチンにも言えることですが、200社以上がワクチンを開発しても、2~3社が開発に成功すればほかの会社はもういらないわけです。インフルエンザワクチンもリレンザとタミフルと、あといくつかを加えればそれ以上は必要ない。誰かが開発に成功すれば、ほかの会社は失敗する。僕たちに賭けてくれた投資家の方々には申し訳ないと思っていますが、新薬開発はそういうものなんです。ここは是非ご理解いただきたい。