歯科矯正のように近視を矯正する日が来る
──眼軸の短縮は一定時間、継続するものなのですか?
窪田:そこはまだ分かりません。設置型での試験で分かったことは、あくまでも、網膜にパターンを見せることで眼軸が短くなったということだけです。少なくとも数時間は短くなっているということは分かっていますが、何日も持つのかどうかは次の試験です。また、1日中かけなければならないのか、それとも午前中の1時間でいいのかといった点も今後の試験で明らかにします。
よく誤解されるのであらかじめ言っておきますが、眼軸は1日の中で日内変動があります。僕たちが短期試験で成功したのは、眼軸が最も伸びる午前中に伸びを押さえ込むことができたということです。眼軸の伸びを恒久的に抑えられるかどうかは長期試験をやらなければ分かりません。それはこれから実施します。
いずれにせよ、眼軸が最も伸びるときに短縮させることが一番重要だということは、他の人の研究でも分かってきています。
──私も近視ですが、ある程度、年を取ってからも抑制可能なのでしょうか。
窪田:歯の矯正と同じで、近視が進んでいる子どもに着装させるというのが基本です。子どもは一度近視になると、一気に進行する傾向があります。眼軸の伸びを抑えつつ、眼球の成長を待てば、いずれは焦点と網膜が一致するでしょう。
年を取ってから、伸びた眼軸が戻るかどうかは次の研究レベルですね。一番大事なのは、小学生で目が悪くなり始めたときに矯正すること。仮に、クボタメガネの近視抑制が証明されれば、近視が存在しない時代が来るかもしれません。ワクチンと同じように、子どものうちに矯正できれば、近視のない世代が誕生しますので。これは大きな夢ですね。
──大半の人は眼鏡やコンタクトレンズなどのデバイスで視力を矯正していますが、近視が治療可能になれば、人々の生活を大きく変えるのは間違いありません。
窪田:近視は、2050年に世界の約半数に人がなるといわれています(資料)。文科省の調査でも、小学生から高校生の裸眼視力が落ちていると報告されています。近視が進むと、緑内障視野障害や白内障、網膜剥離などのリスクが上がりますので、近視が治療できるかどうかはとても重要です。歯の矯正も、昔は歯並びなど気にしませんでしたが、今は治せるのであれば治そうと考える親御さんが増えています。治療法が出れば、近視も同じようになるのではないでしょうか。