NASAが認めた小型検査装置の可能性

窪田:糖尿病になると、体のさまざまなところから余分な水分(漿液)が漏れて浮腫(ふしゅ)ができます。糖尿病の患者は黄斑浮腫といって網膜にも浮腫ができることがあり、浮腫ができると注射を打って浮腫を止めます。ただ、注射が効く期間が人それぞれで、1カ月後にまた浮腫が出る人もいれば、1年間出ない人もいます。その状況をモニターするためには、病院に行き、目の状況を検査しなければなりません。NASA(米航空宇宙局)のデバイスは、言うなれば、この検査装置を小型化したものです。

国際宇宙ステーションで船外活動をするNASAの宇宙飛行士。目のモニターも仕事の一つ(写真:ロイター/アフロ)
(写真:ロイター/アフロ)

──なぜNASAが眼科診断装置を?

窪田:宇宙ステーションに長期間いると、視力障害や失明につながる神経眼症候群という病気にかかる可能性が上がるという報告があります。そのために、宇宙ステーションには定期的に目の状況をモニターする装置が置かれています。

 ただ、この装置は大きい上に、眼科医ではない宇宙飛行士には操作が難しい。それに、宇宙飛行士はさまざまな実験を分刻みでやっているのに、この装置だと撮影の準備に1時間くらいかかるんですよ。一方、僕たちの装置は小さいですし、セルフィーのように自撮りできる。それで、NASAが関心を持った。