尖閣諸島付近を航行する中国の海洋監視船(2012年10月25日撮影、写真:第11管区海上保安本部/ロイター/アフロ)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 世界中がコロナ感染対策で大わらわだった5月、中国は「香港国家安全法」を成立させた。中国外務省は「完全に中国内政に属し、いかなる外国も干渉する権利はない」と表明。同月、南シナ海の各諸島を自国の「南沙区」「西沙区」として行政区に設定したと発表。

 6月、オーストラリアが、中国でのコロナの発生源調査を求めたことへの報復として、豪州産牛肉を一部輸入停止・大麦に追加関税を課した。同月、インド北部でインド軍と小競り合い。その後、ブータン東部の領有権を主張。同月末、モンゴル自治区に、学校でのモンゴル語教育を中止して中国語に置き換えるようにと通達した。

 7月、イギリスが香港との犯罪引き渡し条約を停止すると、中国は、英国は国際法に違反していると批判、強力な対抗措置を取ると表明した。米国が「米国の知的財産と米国民の個人情報を守るため」に、テキサス州ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命じた。中国は即座にその報復として、成都の米総領事館の閉鎖を命じた。

 内にあっては、いかなる政府批判も許さず、物言えぬ自由のなかでのみ国民を放し飼いにし、外にあっては、周辺国に対して敵対的姿勢と拡張主義を隠そうとはしない。中国政府の頭にあるのは中国共産党の永続的安定のみである。中国の強気の背後にあるのは、急激に力をつけた世界有数の経済力と軍事力である。

「尖閣侵略の意図を隠さなくなっている」

 日本にとって重要なことは、尖閣諸島をめぐる中国の動向である。

 5月8日、尖閣諸島周辺で中国海警局の公船が領海侵犯したうえに、あろうことか日本漁船に対して「退去」するよう促し、3日間も追い回すという異常事態が発生した。海上保安庁の巡視船は領海からの退去を警告したが、中国側はこれを無視した。海保はこの中国船の動きを撮影している。衛藤晟一内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策担当)は5月9日の記者会見で、その映像を公開すべきだという声に対して、「今、検討中」であると答えた。外務省は「海上警備体制の手の内を見せることになる」との理由から公開に否定的だが、ただの言い訳だ。