今回は中共が米露やインドまで敵に回す

 ところが、日本切腹中国介錯の最終的な勝者である中国共産党が今、戦前・戦中の日本の「八紘一宇」「大東亜共栄圏」を彷彿(ほうふつ)とさせる「一帯一路」「人類運命共同体」「アジア運命共同体」「中国夢」などの構想を掲げ、域外覇権国の米国をアジアから排除して、西太平洋地域やユーラシア大陸の大半を中国共産党帝国の版図に組み込もうと画策している。

 平成25年(2013年)3月に国家主席に就任した習近平氏の影響下にある国営の中国新聞網は同年7月、今後50年間に中国が戦うべき「6つの不可避の戦争」として(1)台湾「統一」戦争(2020-2025年)、(2)南シナ海の様々な諸島の領土「回復」戦争(2025-2030年)、(3)チベット南部の領土「回復」戦争(2035-2040年)、(4)釣魚島(魚釣島を含む尖閣諸島)及び琉球諸島(沖縄)の「回復」戦争(2040-2045年)、(5)外蒙古(モンゴル国)「統一」戦争(2045-2050年)、(6)ロシアに奪取された領土の「回復」戦争(2055-2060年)を挙げた。この構想は、平成29年(2017年)10月の中国共産党大会に合わせて北京で開催された政府系シンクタンク主催のシンポジウムでも再び発表されている。党中央の暗黙のお墨付きということだ。

 日本のアジア征服計画とされる「田中上奏文」(昭和4年[1929年]に中国が宣伝を始めた偽書)の中国版であり、その究極の目的は、米国をアジアから追い出して、漢人による西太平洋地域やアジアの完全支配を実現することだ。中国共産党の軍隊である人民解放軍の強硬派の想定であり、実際の戦闘の順番や時期には変更があり得る。一気に数か所をまとめて片付けることも考えられる。

 いずれにせよ、仮想敵国として超大国である米国をはじめ、台湾・日本・ベトナム・フィリピン・マレーシア・ブルネイ・インド・モンゴル・ロシアなど、主要近隣国や関係国をほぼすべて含む極めて野心的なものだ。それぞれの想定戦争時期は違うものの、世界を敵に戦(いくさ)を仕掛ける中国の自信と決心が表れている。事実、7月23日に満洲吉林省の空軍航空大学を視察した習主席は、「どんな敵も恐れない気概を持たなければならない」「実戦をイメージして戦争に勝つための訓練や人材育成を行うべきだ」とハッパをかけている。

 皮肉なのは、蔣介石や毛沢東の中国が「よそもの」の米国と組み、アジアから米国を駆逐せんとする日本を叩きのめしたのに対し、現代日本は過去に自ら排除を試みた域外国の米国と組んで、アジアから「部外者」の米国を追い出そうと画策する中国共産党に対抗しようとしていることだ。

 さらに皮肉なのは、日本を切腹させた介錯人の中国が、今や日本の敗因であった「政治と戦略の乖離(かいり)」「国内矛盾解決のための冒険主義」「国家理念や戦略の欠如」「国際的孤立」など類似要因に突き動かされ、戦前の日本のような自滅の道を歩み始めているように見えることだ。

 中国の国土の広さ、資源の豊富さ、国力・戦力の充実など、戦前の日本とは単純に比較できない面も多いが、国際公約である香港の一国二制度の残り27年を待ちきれずに放棄したり、東シナ海や南シナ海で公然と地政学上の現状変更を推進するなど、最近の「国際協調よりも共産党支配護持」「国益より党益」「世界を敵に回す覚悟」などの傾向は、戦前の日本のような自壊的ともいえる政戦略の乖離を示している。