国家安全保障よりも再選を優先するトランプ外交を批判するボルトン元補佐官

「再選のため大豆、小麦を買ってくれ」

 6月23日に発売予定だったジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)のドナルド・トランプ政権暴露本の内容が17日、事前に漏れた*1

https://www.wsj.com/articles/john-bolton-the-scandal-of-trumps-china-policy-11592419564

https://www.nytimes.com/2020/06/17/us/politics/bolton-book-trump-impeached.html

 ボルトン氏は、本の中で、トランプ大統領が中国の習近平国家主席に2020年秋の大統領選で再選できるように援護してくれるように要請していた新事実を明らかにした。

 具体的には米国の農民が生産する大豆や小麦をもっと買ってくれというものだ。農民票は再選には極めて重要だと習近平氏に切々と説いていた。

*1=司法省は「公表されれば安全保障を脅かす機密情報が含まれている」として出版差し止めを求めて6月16日、提訴。出版社とボルトン氏側は提訴の寸前、保守派のウォールストリート・ジャーナルとリベラル派ニューヨーク・タイムズ両紙に本の抜粋を提供したのだ。

https://www.latimes.com/politics/story/2020-06-17/federal-prosecutors-are-mulling-criminal-charges-against-john-bolton

The Room Where It Happened: A White House Memoir By John Bolton Simon & Schuster, 2020

 トランプ氏が習近平主席に頼み込んだ時期は、2019年6月20日。

 場所は日本国内の大阪のホテル。主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)の会場、インテックス大阪(大阪国際見本市会場)だった。

 ボルトン氏はこの会談に同席していた。その模様を生々しく記している。

「習近平主席は、トランプ大統領に向かってこう切り出した。『米国内には中国との新たな冷戦を始めようとする政治家たちがいる』」

「トランプ氏は即座に習近平氏が民主党の連中を指していると感じ取った」

「トランプ氏は習近平氏の発言に同意するかのように、民主党の中には中国に対して戦闘意識を抱いている者がいると応じた」

「そしてトランプ氏は、話題を2020年の大統領選に変えて、中国の経済力が2020年の米大統領選にいかに影響を及ぼすかをほのめかしながら、自分が選挙で勝つことを確かなものにできるように援護してほしいと述べた」

「トランプ氏は(大統領選に勝つには)農民票が極めて重要だ。もし中国が米国産の大豆や小麦をもっと買ってくれれば、自分の選挙には大いに助かると強調した」

(これに対して習近平主席が何と答えたかについての記述はない。また、その見返りにトランプ氏が習近平氏に何をするかについての記述もない)