アメリカ国防長官時代のマティス大将(2017年、出所:NATO)

(北村 淳:軍事社会学者)

 アメリカのミネソタ州ミネアポリスで発生した白人警官による黒人容疑者の殺害事件に端を発して、反人種差別を掲げた大規模な抗議活動が全米各地で勃発している。

 この種の抗議活動に乗じた略奪事件も少なからず発生しているものの、抗議活動のほとんどが一般市民による大規模なデモンストレーションである。ところがトランプ大統領は、略奪や暴徒化した事例を強調して、自らが最高指揮官を務めるアメリカ軍を投入してでも抗議活動を取り締まる、との姿勢を打ち出した。

 それに対して、米軍や国防総省などの高官を務めた多数の人々が、憲法上の危機であるとして、トランプ大統領を強く批判している。そのなかでも最も激烈な言葉で大統領を批判したのが、かつてはトランプ大統領を支えた前国防長官のジェームズ・マティス元海兵隊総司令官である。