元週刊朝日編集長の山口一臣氏も、ツイートで懸念を表明している。

「エジプトに限らず、アメリカやヨーロッパ各国はもちろん、中国や北朝鮮、ロシアといった国を含めて外国政府が言うことを疑いなく信じることは危険です。中国は尖閣諸島は中国古来の領土と言ってますが、信じますか? ロシアは、北朝鮮は、韓国は……。日本だって国益のためにウソくらいつきますよ」「最大の問題は(小池氏が)外国政府の強い支配下にあるということでしょう。カイロ大学に声明を出してもらったことで、以後、彼女の生殺与奪権は軍閥独裁のエジプト政府が握りました。目先の批判をかわすために、国を売ったのと同然です」

なぜ小池氏の学歴詐称疑惑が問題なのか?

 小池氏の学歴詐称問題に関し、なぜ学歴ばかりを追及するのか、他にもっと大事なことがあるではないかという声も聞く。それはもっともで、筆者自身も、政治家の能力と学歴はあまり関係がないと思っている。しかし、学歴詐称は犯罪であり、看過ごしてよい問題ではない。日本に限らず、それが原因で辞任した政治家や政府高官も少なくない。ところが日本のメディアは、アラビア語ができ、エジプト事情に詳しい人材が少なく、元々政治権力に立ち向かう姿勢にも乏しい。そのため、本件が重大な問題であるにもかかわらず、きちんとした報道がなされていない。一方、欧米では、嘘は厳しく断罪され、小池氏のようなケースをメディアが見過ごすことはあり得ない。

 筆者は、アラビア語を学び、エジプトの大学(カイロ・アメリカン大学というカイロ大学とはまったく別の米系の私立大学)を卒業した者の責務として、疑惑解明に取り組むことにした。英国に住んでいるので、エジプトまでのフライトは5時間ほどという地の利もある。

 小池氏が都知事に相応しいかどうかは、4年間の都政の実績の評価、公約の達成度合い、人間性など、色々な面を検討して判断されるべきであるのは当然だ。しかし、それらは筆者でなくてもできることなので、他の人々にしっかりやってもらいたいと思っている。筆者の本業は小説執筆で、こうしたことに割ける時間は限られている。そのため学歴詐称疑惑に絞って調査・執筆をしている。

 ただ、2年間にわたる本件の調査を通じて見えてきた小池氏の人間像は、石井妙子氏が『女帝 小池百合子』にあますところなく書いたとおり、政治家としての適性を著しく欠いているように思われる。