エジプトの軍事政権に政治生命を握られた小池氏

 カイロ大学は、6月8日に突如、小池氏の卒業を認める声明を出した。これをどう解釈すべきかは「偽造私文書行使で刑事告発までされた小池都知事」に書いた通りだ。

(参考記事)偽造私文書行使で刑事告発までされた小池都知事
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60873

 カイロ大学の声明には2つの嘘が含まれており、端的に言うと、脆弱な自国経済を支えるODA獲得を至上命題とするエジプト政府の意向に沿うためのものだ。文面やタイミングから考えて、これは小池氏のアリバイ工作であると筆者は考えている。

 前都知事の舛添要一氏は、一連のツイッターで次のように指摘している。

「(カイロ大は卒業証書や卒業に至る経過、成績表は公開しておらず)先進国の大学なら、全ての記録を保管し公表できる。声明など出すこと自体が政治的で胡散臭い。日本からの援助を期待する外国政府まで使う。立候補前の政治工作だろう」

「私はパリ大学とジュネーブ大学に籍を置いたが、大学が声明まで出してそれを追認することはない。出すなら声明ではなく当時のデータだ。データ抜きなら政治的都合で何とでも言える。エジプトという専制国家ならではの腐敗の極みだ。証拠も出さずに○○が卒業生だと声明を出す先進国の大学は絶対にない」

「かつて小池都知事から私が聞いたのはカイロ大学『首席卒業は、学生が一人しかいなかったから』という話だ。私は、外国人学生専用のコースかと思った(私が留学したフランスでは外国人専用の博士号コースがあった)が、『学生一人』すら嘘だったようだ」(筆者注・当時のカイロ大学文学部社会学科には約150人が在籍していた)

 また池田信夫氏(経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)はJBpressの「小池百合子氏とカイロ大学の深い闇」で、この問題を取り上げ、見解を述べている。

「一卒業生について大学が声明を出すのは異常であり、先進国では考えられない」「むしろこれで明らかになったのは、小池氏の学歴を証明する証拠はカイロ大学に存在しないということだ。卒業生名簿に小池氏の名前があれば、こんな声明を出す必要はなく、そのコピーを出せばいい。卒業証書を発行した記録を出してもいい」「エジプト大使館が都議会の日程を把握しているはずがないので、これは小池氏が自民党の(小池氏に卒業証書類の提出を求める)決議案を封じるためにエジプト大使館に頼んだものと思われるが、政府の声明はそう簡単に出せるものではない。大使館がそれに応じたのはなぜだろうか。(中略)その理由は、逆にカイロ大学が『あの卒業証書は大学の発行したものではない』と認めたらどうなるかを考えればわかる。その瞬間に小池氏の選挙違反が決まり、当選無効になる。小池氏の学歴を証明するものはカイロ大学の声明以外に何もないので、彼女の運命はエジプト政府に握られているのだ」

(参考記事)小池百合子氏とカイロ大学の深い闇
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60888

 またカイロ大学文学部で学んだ経験があり、『カイロ大学“闘争と平和”の混沌』という著書もあるジャーナリストの浅川芳裕氏はJBpressの「カイロ大『小池氏は卒業生』声明の正しい読み解き方」で、次のように指摘している。

「(小池氏が)カイロ大学を掌握する権力者に頼み込み、入学した行為が尋常ではないのは確かです。カイロ大学の声明でわざわざ『正規の手続き』と強調している点、また大学の公式サイトではなく、大使館という外交ルートを通じて声明を発表している点も尋常ではありません」「(エジプトの政府系新聞アハラーム紙の)記事を深読みすれば、都知事にまで出世した小池氏に対し、彼女を育てたハーテム氏、つまりはエジプト軍閥国家への恩を忘れるなよ(さもなければ真相をばらすぞ)、という脅迫じみたメッセージと解釈することも可能です」「学歴詐称の疑惑の先にある、真の問題は、今回の声明への見返りが何かということです。小池氏はこれまでハーテム人脈の権力構造により、特別待遇を受けてきた。その恩に加え、小池氏は、学歴詐称疑惑の渦中で迎える都知事選の直前、エジプトの軍閥から助け舟を出された格好です。(中略)これは、日本の国益にとって、より本質的な問題といえます」

(参考記事)カイロ大「小池氏は卒業生」声明の正しい読み解き方
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60884