エピローグ
プーチン政権、危急存亡の秋(とき)

 上述のとおり、今年5月1日にOPEC+協調減産合意発効後、油価は反転・上昇しています。今後この趨勢が続くかどうかが、プーチン大統領の今後に大きな影響を与えることになるでしょう。

 ソ連・ロシアの経済構造は≪油上の楼閣≫です。ロシアの代表的油種ウラル原油は北海ブレントや米WTI(West Texas Intermediate)と比較すると性状が劣り、油価はバレル$3~5低くなります。

 1980年代後半には、ウラル原油は瞬間的にはバレル$10を切りました。

 ソ連から欧州向け天然ガス輸出価格は油価連動型ですから、油価が下がるとガス価格も下がります(逆も真なり)。

 そのような状況の中で石油・ガス輸出に依存するソ連経済は疲弊して、ソ連邦は1991年12月25日に消滅。15の民族名を冠するソ連邦を構成する共和国が独立し、ソ連邦の盟主ロシア共和国は新生ロシア連邦として誕生しました。

 油価低迷時に登場した新生ロシア連邦の初代大統領、故B.エリツィン氏は不運な大統領でした。

 彼は1999年12月31日、突然TVに登場して大統領辞任を発表。後継大統領候補としてV.プーチン首相を指名、大統領選挙は2000年3月に実施されました。

 エリツィン大統領の早期辞任による早期大統領選挙になったため、野党は大統領選挙の準備ができておらず、当時殆ど無名であったプーチン首相がかろうじて当選した次第です。

 プーチン新大統領は二重の意味で幸運でした。

 彼が大統領に就任すると油価は2002年頃から上昇開始。ロシアの原油生産量も拡大して国庫が潤い、経済は軌道に乗り、プーチン新大統領は油価上昇を享受。油価上昇は同大統領にとり“力の源泉”になりました。

 油価上昇を享受したプーチン大統領は今、新型コロナウイルスによる経済活動の低迷と油価下落に苦しんでいます。

 油価上昇中とは言え、下がりすぎた油価が暴落前の油価水準($60~70)に戻ることはないでしょう。

 ロシア政府は、今年のウラル原油の平均油価はバレル$30台前半と予測しています。

 とすれば、2020年の黒字予算案が赤字予算になること必至です。

 今年2020年は文字通り、プーチン政権危急存亡の秋(とき)となるでしょう。