(北村 淳:軍事社会学者)
中国が南シナ海上空で「ADIZ」(防空識別圏)を設定するのではないかという噂が再び注目を集めている。5月4日には台湾国防部が、中国が南シナ海上空にADIZを設定する(宣言をする)日が間近いであろうとの危惧を表明した。
この種の憶測は過去にも幾度かなされたものの、実行されることはなかった。だが、米中間の各分野での対立が高まり、南シナ海での米中対決姿勢も緊張の度を加えている現在、そして米海軍が強力な空母戦力を南シナ海に展開することが厳しい状況に陥っている現在、南沙諸島や西沙諸島での防空態勢を一段と強化した中国が、満を持して南シナ海上空のADIZを宣言する日が現実のものとなりつつあることは否定できない。
拡大画像表示
アメリカの都合で設定された東シナ海のADIZ
そもそもADIZは国際法的根拠に基づいて設定されるのではなく、それぞれの国が自国の国防上の都合から独自の基準によって設定する。