2018年11月1日、米国司法省は、米半導体大手「マイクロン・テクノロジー」のDRAM技術を狙ったスパイ活動を行ったとして、中国の国有企業を連邦大陪審が起訴したと発表。この日、ジェフ・セッションズ司法長官は、中国による情報窃取や経済スパイ活動に対処していく「チャイナ・イニシアチブ」を発表した。(写真:AP/アフロ)

(山田敏弘:国際ジャーナリスト)

 最近、米国の大学や研究機関で「中国絡み」のトラブルが頻発している。

 2020年1月28日、米マサチューセッツ州の名門大学であるハーバード大学で、化学・化学生物学部長のチャールズ・リーバー教授(60)がFBI(連邦捜査局)によって逮捕された。ナノサイエンスの分野における世界的権威であるリーバーの逮捕容疑は、中国の武漢理工大学で研究所を設立するとして中国政府から約150万ドルを受け取っていた上に、毎月5万ドルの支払いを中国から受け取っていたこと。これらは当局へ報告の義務があるが、リーバーは捜査員に虚偽の説明をしたことで逮捕された。

 さらに5月には、オハイオ州のクリーブランド・クリニックで研究者をしていた中国系アメリカ人チン・ワンが、中国政府から研究助成金を受けて中国の研究施設で役職をもっていることを米国で虚偽申告したとして逮捕されている。

中国政府が推し進める「千人計画」

 実はこの2人、中国政府が国策として海外の優秀な人材を支援する「千人計画」に参加していた。のちに詳しく見るが、この「千人計画」に関与している米国内の科学者たちはかなりの人数に上り、彼らを米国当局は「中国政府のスパイ行為に協力している」と睨んでいる。上述の摘発もその流れの中で実施されているのである。

 その動きが最近の米中関係の悪化にともない、より強化されている。いま米国政府は、新型コロナウィルスの責任問題や貿易不均衡問題、また中国の通信機器大手ファーウェイなどとの取引をめぐる争いに加えて、こうした米国内で中国政府につながりのある学者や中国人留学生などに対する締め付けを厳しくしているのだ。