「産んだら、みんな母親になれるの?」。虐待された子どもを見かねて保護した女性が問いかける『万引き家族』。

「私が幸せになっちゃいけないの?」。子どもに「勝手だ」と責められた母親が逆切れする『誰も知らない』。

「楽しそうに見えて、子どももいろんなことを我慢してるんや」。親の別居で家族がバラバラになった息子が父親に本音をぶつける『奇跡』。

「父親になろうとするなら、なぜ一緒にいる時にそうしなかったの」。離婚してから、父親面する男に元妻があきれる『海よりもまだ深く』。

 今回は是枝作品のなかでも特に家族について考えさせられる5本を紹介。かつて観たことがある作品でも、いまの心境で向き合ってみると、また違った発見があったりする。

まやかしの家族が作った、本物の幸せ

万引き家族』

 まずはいまだにレンタルビデオのランキング上位に入る『万引き家族』。小さな平屋に寄り添うように暮らしている老いた母と娘姉妹、姉の夫とその息子の5人の家族。だが、彼らは老婆の年金目当てで転がり込んだ夫婦を中心に誰一人として、血が繋がっていない。ある日、虐待されていた幼女を見かねて連れ帰ったことから彼らの小さな幸せは少しずつ脅かされる。

 世間からは認められない集団が家族として過ごした束の間の日々を描いた『万引き家族』。まやかしの家族が作った、本物の幸せに目がくらむ。