政府の情報力とSNSの影響力

 しかし、そうした「強制」の効果もそれほど大きくはない。また、補償にも限界はある。そうだとすれば、“伝家の宝刀”は用意しつつ、また補償範囲を限定しつつ、国民に自粛の必要性を認識させ、しばらくのガマンを求める情報戦略のあり方が鍵ということになる。

 現代の情報化の時代、政府以外にも多数の情報の発信源がある。特にSNSの影響力は無視できず、どこの国の政府もこの点には苦労している。ただ、たとえばイギリスのジョンソン首相が国民に送った「家から出るな。NHS(ナショナル・ヘルス・サービス)を守れ。命を救え。Stay Home! Protect NHS! Save Lives!」というメッセージは分かりやすく、説得力がある。

 全国的に緊急事態宣言が解除され、自粛状態から解放されたいという国民の欲求が噴出しかねない状態にある。このようなとき、これまでのような自粛を求めるために、国民に対してどのように情報発信し、アピールしていくか。発信者、コンテンツ、メディア、表現、タイミング、それらについてすでに工夫と努力がなされているが、このICTの時代に、有効な行動変容をもたらす情報発信のあり方について研究を進めることが何よりも必要である。

 今回のコロナの経験から、大いに学習し、望ましい行動変容をもたらす方法とともに、政府からの発信によって操作されない方法についても、しっかりと研究を進めていくべきである。