発熱患者の受診を断られるケースが多発

 一般の方だと、「風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている」場合に相談することになるので、それまでは自宅で安静にするか、一般の医療機関を受診することになります。

 しかし今、発熱でコロナ感染の可能性がある方は、受診を断られるケースが多発しているのです。

 なぜそんなことが起きてしまうのでしょうか?

 医療機関の立場からすると、まずコロナ感染かどうかを確かめる方法がありません。そして、コロナウイルスを治療する薬もありません。ですので、医療機関としてもやれることがあまりない、という現実があります。

 PCR検査がやれるのであればまだ対処の仕方もありますが、日本政府は、それを可能にしたら医療機関に人が殺到し、そこでクラスター化するというリスクを懸念しています。そのためPCR検査には制限をかけているのです。いろいろとモヤモヤする人もいるかもしれませんが、一理はあります。

 しかしその結果、一般の医療機関ではやれることがほとんどなく、受診されても周囲の患者やスタッフへの感染リスクだけ残るという結果になってしまいました。

 さらにはクラスター化した病院がさかんに報道されて信頼を失ってしまったので、それを恐れた医療機関が、発熱患者を断るようになってしまったのです。

 また、風評被害の問題も事態を悪化させました。良心のある医療機関が発熱患者を積極的に受け入れて診療していると、

「あそこからはコロナ患者が出た」

「あの人はあの病院のスタッフだからコロナ感染している」

 などというあらぬ噂を立てられてしまいます。

 そしてさらには

「あの子はあのスタッフの子どもだから遊んじゃいけない」

 といったいじめの温床にまでなるという事例が起きています。

 ここで既視感を覚えた人も多いのではないでしょうか。

 そうです、これは東日本大震災とそれに続発した福島原発事故の時に起きた状況と酷似しているのです。

福島原発事故の風評被害と同じことが起きている

 あの時も、福島出身者へ対する差別やいじめ、福島に関連するすべての事柄への風評被害が社会問題になりました。

 また福島だけではなく、その他の地震や台風などの自然災害でも、その都度、似たような問題が生じています。

「天災のあとには人災が来る」は残念ながら今回のコロナ騒動でも当てはまります。

 私たちは、同じことを何度も何度も繰り返しているのです。

 コロナという脅威に対して体を張って立ち向かっていた医療機関も、背後から矢が飛んでくるような状況で持ちこたえられるはずがありません。理不尽な仕打ちに屈して、発熱患者を避けるようになってしまいます。

 あらぬ風評を流した人たちも、恐怖心から出た行動だということは理解できます。しかし、そのような行動によって、最終的には自分たちの首を絞めることになるのです。

 みんなが力を合わせて前を向かなくてはいけない時に、グズグズと内部から自壊していくことは、なんとしても避けなくてはなりません。

 アフターコロナの社会基盤、社会構造をどうするかが議論されるようになりました。それも大事です。でもそれと並行して、私たちはこういったときにどうふるまうべきなのか、どうあるべきなのかといった自分たちの内面も、しっかりブラッシュアップしていかなくてはいけません。おそらくそれが、さまざまな問題を最短距離で解決するためのカギになります。