専門家会議は、休校や自粛の解除を提言することを心待ちにしていた人々を失望させてしまった。回避すべき場所として名指しで指摘された屋形船やスポーツジムなどの業種は、青息吐息である。

いまは大盤振る舞いが必要な時

 人の移動が禁止されるということは、経済活動が停止し、世界経済が大きな打撃を受けることを意味する。実際に、世界中で生産活動が停止され、製造業、観光業、飲食業、エンターテインメントなど、あらゆる業界が苦境に陥りつつある。たとえば、主要な自動車メーカーは軒並み生産停止に陥っている。

 それが、連日の株価の低下となって帰結している。各国の首脳が言うように、これはまさにウイルスとの「戦争」であり、戦時体制を敷く必要がある。アメリカは1兆ドル(110兆円)、日本は30兆円など、各国は緊急対策を講じようとしている。

 EUは、財政赤字をGDPの3%以内とするというルールを一時棚上げすることにした。実はイタリアで医療崩壊が起こっていることの遠因は、EUの3%ルールに従うために、予算削減を行い、そのしわ寄せが医療資源の不足に帰結していたのである。今回のような感染症拡大という非常事態になると、医師の不足が大きな足枷となってしまっている。

 ウイルスとの「戦争」とはいえ、1939年から1945年まで続いた第二次世界大戦とは違う。中南米やアフリカなど医療資源の乏しい地域に感染が拡大しているのは気になるが、長くても1年半以内には終息するだろう。したがって、今は大幅な財政出動をして、大盤振る舞いと言われるくらいのバラマキが必要である。

 同時に、中小企業など困窮している所に、きめ細かい手当が必要である。地方の金融公庫など窓口に長蛇の列で、相談まで行き着かないという悲鳴が私のところにも届いている。とにかく、当面の資金の手当てが皆必要になっている。

 収入が全く無くなっている人もいる。1カ月食いつなぐのに、10万円あれば何とかなる。10万円を全国民に支給しても、12兆円余りである。GDP500兆円の日本にそれは無理ではない。戦争は長くは続かない。生き残って、戦争が終わったら、また皆で稼げばよい。

 金融緩和の究極の形はヘリコプター・マネーである。空から、札束をバラマキ、市中に流通するカネを増やすことである。安倍首相の大英断を求める。

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