ホワイトハウスで記者団に「無観客で開催するよりは1年延期のほうがいい。日本は自分たちで判断するだろう」と語るトランプ大統領(写真:AP/アフロ)

(山田敏弘:国際ジャーナリスト)

 新型コロナウイルスによって、7月に始まる東京五輪が中止、または延期になるのではないかとの懸念が浮上している。

 そんな中、米ウォールストリート・ジャーナル紙(3月10日付)で、東京五輪・パラリンピック組織委員会の高橋治之理事がコメントとした内容が物議を醸した。

https://www.wsj.com/articles/if-olympics-cant-be-held-this-summer-best-to-postpone-1-2-years-japan-organizing-official-says-11583839757

「大事な時期に軽率なことをおっしゃった」

 同紙は、こう書いている。

「高橋理事は、『東京五輪が中止になる可能性があるとは思わない。延期になるだろう。もし中止になったら、IOC(国際オリンピク委員会)は大変な事態に陥るだろう。アメリカのTV放映権だけで彼らは巨額を受け取っている』と語り、1年後のスポーツイベントはすでにほとんど決定済みで、2年の延期が最も調整しやすいだろうと付け加えた」

 要するに、米NBCユニバーサルの五輪放映権料がIOCの収益にかなり貢献しており、IOCが五輪を延期したら彼らこそトラブルになると発言したのである。この発言に、東京五輪関係者は黙っているわけにはいかない。

 これを受け、組織委員会の森喜朗会長が「大事な時期に軽率なことをおっしゃった」とコメントして不快感を表明。当の高橋理事が森会長に「ちょっと口が滑った。おわびしたい」と言ったと記者たちに説明して見せた。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000178733.html

 また東京都の小池百合子知事も、高橋理事の発言について、「組織委員会の方も把握しておらず、大会延期も検討していないと」と語っている。

https://www.sankei.com/tokyo2020/news/200311/tko2003110003-n1.html

 小池知事は「組織委員会とIOCと一緒に進める中で、7月から開催することに変更はないと聞いている」とも述べている。

 先日筆者は、本サイトで「緊急取材!米国が視野に入れ出した『東京五輪中止』」という記事を寄稿し、米国側の動きを書いたばかりだ。するとそのすぐ後に、案の定、ドナルド・トランプ大統領が「東京五輪の開催について1年間延期すべきだ」と発言したことが報じられた。

(参考記事)緊急取材!米国が視野に入れ出した「東京五輪中止」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59700

 そこで今回は、東京側で取材した、東京都やオリンピック組織委員会などの動きについてお伝えした。取材で見えてきたのは、東京五輪は3月中には中止または延期が決まる、という現実だった。