3月11日、高橋治之組織委員会理事による「五輪開催は2年延期が現実的」発言が報じられたのを受けて、記者の取材に応じる森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長。高橋理事に対して「軽率なことは慎んでほしい」と苦言を呈したという(写真:ロイター/アフロ)

(山田敏弘:国際ジャーナリスト)

 予定通りに開催できるのだろうか——。新型コロナウイルスの影響で、2020年7月から予定されている東京五輪の開催が危ぶまれだした。

 口火を切ったのは、IOC(世界オリンピック委員会)の重鎮ディック・パウンド委員だった。同氏が、「五輪を開催するか否かは5月末までに判断する」と発言し、「1年延期」や「中止」にも言及したことが日本では大きく報じられた。

 これをきっかけに、主催国・日本でも、五輪開催についての議論が沸騰することになった。

五輪開催にIOC以上の影響力を持つNBC

 もっとも現時点では、IOCのトーマス・バッハ会長は定例理事会で「2020年東京オリンピックを成功に導く準備」を強調し、あくまで五輪を予定通りに行いたい姿勢を見せている。

 だが、当の日本側からも開催に疑念の声が上がり始めている。米ウォールストリート・ジャーナル紙の取材に、東京五輪・パラリンピック組織委員会の高橋治之理事が「五輪開催を2年後に延期する可能性もある」とコメントしたのだ。即座に組織委員会の森喜朗会長が「とんでもないことをおっしゃった」などと取材陣に語り、予定通りの開催を強調してみせたが、多くの国民は7月の五輪開催が日に日に難しくなりつつあることを感じ取っているに違いない。

 それを裏付けるように、イギリスのブックメーカーでは、すでに五輪が開催されるかどうかが賭けの対象になっている。だが本当に開催されないような事態になれば、日本にとっては経済に重大なダメージを受けることになる。そこで国外での取材などをベースに、果たして五輪が開催されるのかどうかについて考察してみたい。