3月4日、「中止は全く考えていない」と、IOCバッハ会長の「開催に向け全力尽くす」発言を報じる新聞記事を掲げながら記者に応じる森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長(写真:ロイター/アフロ)

 東京五輪・パラリンピックはアスリートファーストなんかじゃない。ここ最近、そう強く感じている。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない危機的状況にもかかわらず、東京五輪は未だに開催が大前提。大会主催者の間でも中止や延期の議論はまったく行われていない。これは明らかに異常なことだ。その裏側にはさまざまな利権の死守を巡って権力者たちが、ただ保身だけに突っ走ろうと「アスリートファースト」の言葉を都合良く使ってお茶を濁している姿が見え隠れする。

 日本政府からの要請を受け、国内ではプロ・アマ問わず各スポーツのイベントや試合が次々に中止か、もしくは無観客などの縮小開催に追い込まれている。つい先日も大相撲大阪場所(3月8日初日・エディオンアリーナ大阪)の戦後初となる無観客開催が決定。そして4日には第92回選抜高校野球大会(3月19日開幕・甲子園)も観客を入れずに開催する方針を固め、11日に実施の可否について最終結論を出すことを決めた。

 この流れならば、もう必然的に開幕まで残り5か月を切った東京五輪の開催可否も主催者レベルで話し合いがスタートしていなければならないはずだ。言うまでもなく各国が参加する世界最大のスポーツイベントだけに中止や延期となれば、莫大な損失ととてつもない混乱が生じる。そうした数多くの難題を出来る限り解決すべく、また最小限のダメージへと抑え込むためにも1日でも早く“最悪の事態”を想定した取り組みを始めなければいけない。ところが大会主催者側は危機感ゼロで能天気なのだから、もはや救いようがない。

コロナ未終息の場合の判断時期については「神様じゃないんだから、分からない」

 IOC(国際オリンピック委員会)で「最古参委員」と称され、大きな発言権を持つディック・パウンド氏が東京五輪の開催可否について「判断期限は5月末」と発言。日本政府や東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会、JOC(日本オリンピック委員会)の大会関係者は誰もが卒倒しそうなぐらいに大慌てとなった。