このような批判をかわすために、トランプ政権は大規模な対策を講じ始めており、また、多くの州が緊急事態を宣言している。それが大衆の危機感を煽り、全米がパニック状況になっている。マスクなどの不足は、アメリカやオーストラリアやヨーロッパでも日本と同様であり、トランプ大統領は「国防生産法」を使って、医療用品を生産する業界に増産を要請している。また、モリソン豪首相は、買い占め防止を国民に訴えている。
中韓とも欧米とも異なる、日本での感染の広がり方
日本の場合は、欧米に比べて感染拡大のスピードが緩やかなのは、国民の努力もあるが、様々な幸運が繋がったと見てもよい。
国内初の感染者が出たのは1月15日で、武漢を訪ねて帰国した30代の中国人男性であった。その後、28日に奈良の60代の日本人の感染が判明したが、武漢からの中国人観光客を乗せたバスの運転手であった。ヒトからヒトへの感染が確認されたわけである。そして、2月中旬、感染源不明の患者が出現し、また屋形船での感染も判明した。このように、少しずつ段階的に蔓延し、国民が警戒を強化した。これは、爆発的に感染拡大した他国よりも幸運な経過だったが、いつまでこの状態が続くか分からない。
もう一つの仮説は、日本人がすでに集団免疫を獲得しているのでないかというものである。中国の旧正月、春節の前後から湖北省をはじめ中国全土から多数の観光客が訪日しており、各地で日本人と接触している。このため、多数の日本人が感染したことが想定される。しかし、軽い風邪の症状程度だったり、無症状だったりしたために気にもとめずに、免疫ができてしまったという説である。
この説の真偽は分からないが、そう思いたくなるほど、日本の感染拡大の状況は、今爆発的に感染が拡大している欧米や既に終息に向かっている中国や韓国とも異なる。実は、そのような点をこそ、政府の専門家会議に解明してほしいのであるが、20日夜、専門家会議は「持ちこたえているが一部で感染拡大」という見解を示した。
また、感染リスクをさけるには、①密閉空間で換気が悪い、②人の密度が濃い、③近距離での会話という三点の条件が重なることを避けることが必要だと繰り返し警告した。
そして、一斉休校については、それぞれの地域で感染状況に応じて対応するとしたが、それは当然である。しかし、今そう言うのなら、なぜ最初に全国一律に休校を要請したのか。その反省がないまま、今は地域の感染状態に応じて、休校を解除してもよいというのは、あまり説得的ではないし、結局は地方に丸投げということである。
また、大規模イベントの自粛については、「主催者がリスクを判断して慎重に対応を」と言うが、主催者は明確な基準がないかぎり判断はできない。また、イベントを開催すると、無責任だと世間から批判されるので、結局は自粛が続くことになる。