当初、新型ウイルスは武漢・漢口の市場で売られていた動物が発生源とされたが、ヘビ毒研究が本来専門の杜氏は、旧ソビエト連邦崩壊時、多くのロシア人らから「(ソ連の)生物研究所のヘビ毒を(横流しして売るので)買ってほしい」と依頼の手紙、電話があったといい、そうした自身の体験に照らし、「規律の状況などによっては、現場の人間が使用済みの実験動物を焼却せず、換金目的で市場に横流しするなどの行為はあり得る」とみている。

 杜氏はこれまでも、1979年に旧ソ連・スべルドロフスクの研究所から炭疽菌が漏れ、多くの市民が死亡した実例などから、「研究施設から病毒が漏れることはよくある」としてきた。

緊急来日し、持論を述べる杜祖健氏(筆者撮影)

 加えて今回の新型ウイルス問題発生後、米国のCDC(疾病コントロールセンター)が伝染病の専門家を武漢に派遣し、感染拡大阻止に協力したいと申し出たことに対し、中国側が対応しなかったことも、「中国側には知られたくない事情があることが疑われる」とみる。

否定できない「実験中のウイルスが不手際で漏出」の可能性

 また、中国当局が1月末、中国科学院武漢病毒研究所に人民解放軍の女性少将、陳薇氏を派遣した点について、「女史は浙江大学卒業後に軍に入り、生物兵器に関連してアフリカでエボラウイルスなどを研究した人物で、中国軍事医学科学院の生物工学研究所長」「本来なら現地には医学の専門家を送るべきだが、中国で最も優れた生物兵器の専門家を送り込んだことは注意すべき動向」といぶかしむ。

「そもそも武漢病毒研究所のようなバイオセーフティーレベル4(BSL-4)施設を持つ研究所は、兵器レベルの研究、開発が主眼とみられる」「発症前にヒトからヒトへ感染し、一度発症して回復したのち、再び罹患するなどの特徴も蔓延阻止の対応を困難にしており、この点も人為を疑う要素」という。

 杜氏は「これらはいずれも間接的な、いわば状況証拠にすぎない。確かに生物兵器として危険な病源体やウイルスを培養するのだとしたら、つくる側は同時にワクチンや抗毒剤を大量に準備しないといけない」としつつも、「私見では新型ウイルスは実験、研究の途中で、何らかの不手際が発生し、武漢の研究所内から外部に漏れたのではないか。その説明が最も納得できると思う」と総括した。