米軍と長くかかわってきた杜氏は、米国の情報収集力の大きさを体感しており、また今回の新型ウイルスへの初期対応で、中国を警戒してきた台湾の決断の素早さに注目。逆に日本の情報収集力の弱さ、危機感をもった動きの遅さを対照的にとらえている。

「2003年、中国広東省から感染拡大したSARSに苦慮した台湾では、早期にBSL-4施設を整備し、SARSウイルスをはじめ炭疽菌などを培養、研究してきた」と証言。実際、李登輝政権時代には中国の蘭州発とみられる口蹄疫で養豚業が打撃を受けたこともあり、続投が決まった蔡英文政権でもヒトや家畜なども含め、中国発の未知の病原に強い警戒心が根底にあった。

家畜や穀物を対象とする生物・化学兵器も開発されている

 また杜氏は「一般には知られていないが、台湾の研究所でもSARSウイルス漏出騒ぎが発生し、大事に至る前に収束させたことがある」とし、台湾がこの失敗からも危機管理能力を伸長させてきた点を指摘。

杜祖健氏(筆者撮影)

 一方、日本はSARSや、その後のMERS(中東呼吸器症候群)の感染拡大でも直接の被害を受けておらず、対外危機意識の低さもあり、初期対応の多くが後手に回ったかっこうだ。

 杜氏は、「多くの病原体が、生物兵器として多くの国でつくられている。例えば(根絶した)天然痘は生物兵器の有力な候補者として準備されている。炭疽菌は実際に米国でテロに使用された。こうしてみると新型コロナウイルスが生物兵器の試作段階の漏出であっても不思議ではない」と推測。

「最近はヒトに限らず、家畜や穀物を対象とする生物・化学兵器、毒素兵器も研究対象になっている。相手が何を研究しているかがわかれば、その防衛方法を準備することもできる」と警鐘を鳴らしている。