この結果は、中国政府にとっても想定外のものであったに違いない。そもそも共産党一党独裁の中国は、民意などは無視してきた。民意というものを理解できないと言ってもよい。かつてとは違い、中国共産党は経済的な躍進を背景に、潤沢な資金を持っている。また、軍事大国でもある。この金と軍事の力で何でも押さえ込むことができると思っているのだろう。

 香港市民は、それに対して自由や民主主義の尊さと価値の大きさを示したのである。

「今日の香港は明日の台湾」

 香港市民の戦いは、台湾の総統選挙にも影響を与えた。そもそも「一国二制度」は、約40年前に中国の指導者だった鄧小平(とうしょうへい)が、台湾を統一するために考えた制度であった。それが1979年1月に発表された「台湾同胞に告げる書」である。

 2019年1月2日、習近平は「台湾同胞に告げる書」発表40周年式典で、「制度の違いは統一の障害にはならず、ましてや分裂の口実にはならない」「『平和的統一、一国二制度』は国家統一を実現する最良の方法であり、「海、百の川を納め、容の大なる有り」という中華の知恵を体現しており、台湾の現実的状況を十分に考慮しているとともに、統一後の台湾の長期的な安定と平和にも寄与する」「統一は歴史の大勢であり、正しい道だ。『台湾独立』は歴史の逆流であり、先のない道だ」などと語った。

 台湾の蔡英文総統は昨年10月10日の双十節(建国記念日に相当)の式典で演説し、「香港は(中国が返還後も高度な自治を認めるとした)一国二制度が失敗し、秩序を失っている」と中国を批判し、台湾は一国二制度の受け入れを拒否すると断言した。また蔡総統は、この制度を受け入れれば「(台湾の)生存空間は失われる。拒否は、政党などを超えた台湾の最大のコンセンサスだ」と強調した。

 1月11日に投票が行われた台湾の総統選挙では、現職の与党・民進党の蔡英文総統が過去最高となる800万を超える票を獲得し、親中派の韓国瑜候補に圧勝した。これには香港市民の戦いが大きな影響を与えている。中国が言うような「一国二制度」を台湾が受け入れれば、いずれ香港のようになってしまうという恐怖心である。今回の選挙では、「今日の香港は明日の台湾」というスローガンが大きな力を発揮した。