博多・天神の様子(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 全国的に人手不足が続いているが、もっとも働き手を欲しているのは、労働人口の東京一極集中のあおりを受けている地方だろう。地方活性化の目的からも、自治体主導でUターンやIターンを促す動きも活発になっており、関心を寄せる人も増えているとは思うのだが、そこでネックになるのが「自分のキャリアを生かせる仕事が地方にあるのか」という点ではないだろうか。

 首都圏から福岡への移住を伴う人材紹介を手掛ける「YOUTURN 」という会社がある。代表の中村義之氏によれば、福岡市クラスの都市では大幅なキャリアアップにつながる仕事が「たくさんある」のだという。首都圏から地方への移住・転職を成功させる秘訣を中村氏に聞いた。(聞き手・構成:JBpress 阿部 崇)

「地方移住は都落ち」と見られる現状を変えたい

——事業を開始して2年ほどだそうですが、その間に感じた福岡への移住・転職の感触を教えてください。

中村義之氏(以下、中村) 移住・転職のニーズは、福岡の企業にも、また首都圏で働いている人々の中にも非常に強くあるなと感じていますが、一方でこれをしっかり結び付けていくことってハードルが高いんだなという思いもあります。

 まず、働いている人にとって地方移住に求めるものって大きく言えば2つだと思うんです。1つは、「ワークライフバランスを余裕あるものにしたい」、「広い家に住みたい」というようなQOL(生活の質)を上げるということ、そしてもう一つ、特にバリバリ働きたい若年層にとって「それまでのキャリアを無駄にしない仕事に就きたい」ということです。

 福岡という土地については、「住みやすい」という情報がかなり広まっていますので、前者に関しては安心してもらえていますが、問題は後者です。「地方に移住する」ということは、言葉を選ばず言ってしまうと「都落ち」にならないか、キャリアダウンにならないか、という心配がどうしても付きまとうんですね。

——地方よりも東京の方がハイレベルな仕事が経験できる、ノウハウも吸収できる、給料も高い、というイメージはありますよね。

中村 はい。ただ、実態はそうではないんです。福岡にも、面白い仕事、いい経営者、やりがいのある仕事があるので、そこを伝えていくようにしています。

中村義之氏:1984年生まれ。福岡市生まれ。2008年、DeNA入社。2010年10月、同社から分社・独立した「みんなのウェディング」設立に取締役として参画。2014年3月、みんなのウェディング、東証マザーズ上場。2016年5月、福岡で株式会社YOUTURNを創業。

 実は私自身、高校までは福岡、大学生時代は茨城県のつくば市で過ごし、卒業後は東京で働いていました。そこでキャリアを積んだ後、紆余曲折の末、福岡で事業を始めることにしたんですが、SNS等で「福岡で起業します」と告知すると、返ってくるレスポンスの中に「東京で夢に破れて田舎に帰るんだね」というニュアンスがにじみ出ているんですよね。「人材不足に悩む福岡の企業と、地方移住に関心を持ちながら正確な情報を持っていない首都圏の優秀な人材との橋渡しをする課題解決型の事業」というチャレンジングな活動をするつもりなのに、ネガティブな目で見られていることが寂しかった。

 ただ、現状では地方移住やUターン、Iターンにはまだそういう見られ方があるのも事実です。なので、われわれはその見方自体を変えていきたいと思っています。