左からジョン・W・レイモンド空軍大将、トランプ大統領、ペンス副大統領。署名しているのはマーク・エスパー国防長官(写真:ホワイトハウス)

(北村 淳:軍事社会学者)

 アメリカ連邦議会下院がトランプ大統領の弾劾訴追を決議した2日後の12月20日、トランプ大統領は2020年度国防権限法に署名した。これによって、「アメリカ宇宙軍」が正式に誕生したことになる。

 宇宙軍といっても、SF映画のように宇宙空間での戦闘を任務とする軍隊ではない。アメリカの国益にとって必要不可欠な宇宙空間での諸活動、とりわけ各種衛星の防衛を主たる任務とする軍隊である。

空軍省の管轄下にアメリカ宇宙軍を創設

 創設されたアメリカ宇宙軍(U.S. Space Force)は、その母体となるアメリカ空軍と共に行政的には空軍省の管轄下に置かれることになる。これは、海軍省の管轄下にアメリカ海軍とアメリカ海兵隊が置かれているのと同じだ。

 シビリアン(文民)のポストである空軍長官の指揮下に、大将のランクを有する宇宙軍作戦部長(Chief of Space Operations)がアメリカ宇宙軍のトップとなる。トランプ大統領は、初代宇宙軍作戦部長に「アメリカ宇宙集団」(U.S. Space Command)司令官のジョン・W・“ジェイ”・レイモンド空軍大将を指名した。

バーバラ・バレット米空軍長官

 ちなみに、アメリカ宇宙集団というのは、空軍や海軍といったような独立軍種ではない。軍事作戦を効率的に遂行するために、地理的にあるいは機能的に独立軍種を横断的に編成した統合戦闘集団(Unified Combatant Command)と呼ばれる集団(Command)の1つである(「Unified Combatant Command」を「統合軍」と翻訳するのは誤りである)。