田原 なるほど。じゃあ、サイバー攻撃を仕掛ける側の規模ってどれくらいなんですか。中国の政府系のサイバー攻撃部隊ってどれくらいの人員がいるんですか。

山田 サイバー攻撃専門にやっている人は人民解放軍の中に20万人いると言われています。20万人のうち、高度な数学的知識を持った本物のハッカーは7~8万人で、残りはお手伝いしている人たちです。彼らは三交代でサイバー攻撃をしています。

「人民解放軍のサイバー部隊は三交代でサイバー攻撃にあたっています」(山田敏弘氏)

五輪不参加のロシアは必ずサイバー攻撃を仕掛けてくる

田原 三交代で?

山田 はい。それくらい本気の攻撃を仕掛けています。中国のサイバー部隊はますます増強中でもあります。人民解放軍は2015〜2016年に組織改編をしていますが、そこで人民解放軍戦略支援部隊という組織が作られました。詳しい実態は明らかになっていませんが、プロパガンダもサイバー攻撃も、コンピュータを使う攻撃・作戦は全部そこに入れ込もうという構想です。となれば、すでに数百万人規模の部隊になっているとの分析も聞いています。軍事予算の30%近くをそこに充てようとしているという予測もあるほどです。

田原 そんなに大規模なものなんですか!

山田 それくらいの人員と予算、そして現在の中国のサイバー技術があれば、できないことはまずありません。例えば、ちょっと調べるだけで、田原さんが今日どこに行くのか、昨日の夜に何を食べたかも分かるわけです。それを彼らは徹底的にやろうとしている。世界でも屈指のサイバー攻撃力を持っていると言ってよいでしょう。

田原 ロシアはどうですか。

山田 ロシアのサイバー部隊の実態は非常に分かりづらくなっています。ただ、軍人としてサイバー攻撃をしている人は数千人規模と言われています。

 ロシアの場合は、中国のように一枚岩というか、組織間の連携がとれていないのです。スパイ組織としては、FSB(ロシア連邦保安庁)やSVR(ロシア対外情報庁)という組織があります。それぞれもともとはKGBで、対外活動がSVR、国内活動はFSBというすみ分けですが、作戦によっては重なる部分も出てきます。ところが互いに連携することなく、それぞれが自分たちの思うように攻撃しているようなんです。

 例えば、2016年のアメリカ大統領選の時には、ロシアがアメリカをハッキングしていますね。

「軍事予算の30%をサイバー部隊に? 中国のサイバー部隊ってそんなに大規模なんですか(田原総一朗氏)

田原 クリントンに対してやった。

山田 そうです。SVRとGRU(参謀本部情報総局)ですね。この両者がどうも一緒に攻撃していないことが明らかになりました。というのも、時間差で同じものを盗んでいっていたからなんです。ですからロシアでは、それぞれの機関が独自に動いている。なので、われわれからはその活動実態が分かりにくいとも言われます。ただ少なくとも、ウラジーミル・プーチン大統領が直々に指示を出しているようです。また平昌の冬季五輪をサイバー攻撃して妨害したのもGRUです。

 ちなみにロシアはドーピングで国として平昌五輪に出場できなかった報復でサイバー攻撃を仕掛けました。今、ロシアはまた東京五輪に出場できないと言われていますが、そうなると東京五輪がサイバー攻撃で襲われる可能性が十分にあります。