北朝鮮はサイバー犯罪で20億ドル稼ぐ

田原 北朝鮮はどうですか。

山田 私も韓国で脱北者らを取材するなど情報を集めていますが、そこで伝わってくる北朝鮮のサイバー部隊の規模はだいたい6000人です。この部隊は、朝鮮人民軍偵察総局の中の機関になります。6000人のうち1800人くらいが本物のハッカー、残りは協力するスタッフということです。

 北朝鮮の本物のハッカーたちは、国家によって、全国から集められた数学の天才たちです。北朝鮮は、数学の才能のある若者をどんどん青田買いして、平壌に集め、一人につき80坪の邸宅を与えています。もちろん家族を呼びよせてもいいし、子どもが出来たら優秀な学校にも通わせてくれる。病気のときには、それこそ将軍様が行くような最先端の病院で診てもらうこともできる。それくらい優遇しています。

「アメリカには『サイバー軍』があります」(山田敏弘氏)

 裏を返せば、金正恩はそれほどサイバー攻撃に力を入れているんです。北朝鮮は、年間10億ドルほどのカネをサイバー攻撃を通じて盗んだり稼いだりしていると言われています。国連はこれまでに暗号資産(仮想通貨)交換業者などへのサイバー攻撃で20億ドルを稼いでいると報告しています。

田原 じゃあアメリカは?

山田 アメリカもすごいんです。なにしろ、アメリカには「サイバー軍」があります。軍部の一つになっているんです。

田原 それは陸軍でも海軍でも空軍でもなくて、サイバー軍?

山田 北方軍、中央軍、アフリカ軍、特殊作戦軍、戦略軍など現在10個ある統合軍の1つという位置付けです。

 以前は戦略軍の一機関でしたが、昨年8月、統合軍の一つへ昇格しています。これはトランプの肝入りでなされました。ここは現在、6000人ほどの規模と言われています。

 それだけだとアメリカのサイバー攻撃部門は小さいように感じるかもしれませんが、実はアメリカにはもう一つ、あのNSA(国家安全保障局)があります。ここには何千人もの数学者が在籍すると言われていますから、中国を超えるサイバー部隊と言っていいでしょう。世界トップレベルの本当に優秀なハッカーはその中でも1000人ほどと言われていますが。

 このサイバー軍とNSAは常に協力しながら世界中にサイバー攻撃を仕掛けています。長官も一緒ですよ。どちらもトップは、ポール・ナカソネさんという日系アメリカ人です。

 このナカソネさんというのは、以前、イランに対するサイバー攻撃の作戦をずっとやっていたので、彼は今後またやるんだろうなと。