「具体的に中国はどんな攻撃をしてくるんですか」(田原総一朗氏)

 われわれの目に触れないところで、猛威を振るい続けているサイバー攻撃。ときにそれは国家機能をマヒさせるほどの甚大な被害をターゲットとされた国家にもたらす。国家に対するサイバー攻撃はどのような手口で行われているのか。田原総一朗氏が、サイバー問題を深く取材しているジャーナリストの山田敏弘氏をインタビューした。3回シリーズの第二弾をお届けする。(構成:JBpress編集部・阿部 崇、撮影:NOJYO<高木俊幸写真事務所>​)

(第一回はこちら) あなたの個人情報、世界中の犯罪集団が狙っている
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58712

7pay不正アクセス事件の動機は金銭目的じゃない

田原 日本にとって中国からのサイバー攻撃が非常に脅威になっているのは分かったけど、山田さんが特に心配しているのが来年の東京オリンピックだそうですね。

山田 オリンピックは世界が注目する舞台ですし、動くおカネの量も莫大です。開催国となる日本は、当然ながら、この巨大イベントを成功させたい、新しい技術をどんどん投入して世界に見せつけたいと考えています。逆に、世界最先端の技術大国になろうとしている中国は、なんとか失敗してもらいたい、という思いがあるわけですね。

田原 じゃあそこで、具体的に中国はどういう攻撃をしてくるんですか。

山田 考えられるのは、例えばスポンサー企業に対しての攻撃です。前回説明したような方法で企業を攻撃し、おカネを抜き出したり、個人情報を抜き出したりするというやり方です。今年7月、スタートしたばかりの「7pay」で不正利用が続発するという騒動がありました。被害総額は3800万円ほどとされ、逮捕されたのは中国籍の人物数名です。

 3800万円という被害額は、企業からすればさほど大きなおカネではない。おそらく7payのシステムに不正アクセスした犯人も、逮捕された中国籍の人物たちの動機もおカネじゃないはずです。

山田敏弘:国際ジャーナリスト。1974年生まれ。米ネヴァダ大学ジャーナリズム学部卒業。講談社、英ロイター通信社、『ニューズウィーク』などで活躍。その後、米マサチューセッツ工科大学でフルブライト・フェローとして国際情勢とサイバーセキュリティの研究・取材活動にあたり、帰国後はジャーナリストとして活躍。最新刊『サイバー戦争の今』 (ベスト新書)

田原 じゃあ、日本企業の信用を貶めるために・・・。

山田 そうです。同じように、「オリンピックが大々的な成功を収めないようにする」というのも彼らにとって日本へのサイバー攻撃の十分な動機になります。