(数多 久遠:小説家・軍事評論家)
12月3日、麻生太郎財務大臣が潜水艦に搭乗したことが報じられました。マスコミは、“桜を見る会”報道で多用している「私物化」というキーワードとともに、一斉に非難する論調でこの出来事を伝えました。
東京新聞に掲載された憲法学者、飯島滋明教授のコメントでは、「そもそも麻生氏が潜水艦に乗る理由がなく、趣味で乗ったとしか考えられない」とまで断言しています。
元自衛官である筆者の経験から言うと、大抵の場合、部隊では、“お偉方”の視察は面倒なモノでしかありません。麻生大臣の視察に対しても、不満を持った隊員はいるかもしれません。
しかし、麻生大臣の潜水艦乗艦は、部隊にとって非常にありがたいものだったと思われます。そしてそれは、記者もほんの少々取材をすれば理解できたはずです。
以下では、なぜ自衛隊にとって麻生大臣の潜水艦視察が必須だったのか、その理由を説明したいと思います。
なぜ最も古い艦を視察したのか
「私物化」「公私混同」との指摘に対し、麻生大臣自身は「現場を歩かないで書く社会部の記者と違う」と反発し、この視察が防衛予算の査定作業にあたる上で重要だったと述べ、年度末に向けて調整が進められている予算査定で参考にするためであったことを明かしています。また、視察には財務省の職員も同行していました。