また政府与党でジョコ・ウィドド大統領の出身母体でもある「闘争民主党(PDIP)」の東ジャワ支部のスリ・ウンタリ・ボソワルノ支部長も「処女かどうかは私的な問題であり、コーチは他人やメディアに言うべきことではない。事実かどうかは別にしてこのコーチは選手本人に心理的、精神的ダメージを与えて混乱に陥らせた」と厳しく批判。その上で「同じ女性として問題を懸念しており、コーチの謝罪とシャルファさんの代表選手への復帰そしてフィリピンでの大会への参加を求める」としている。

 同州クディリの高校3年生であるシャルファさんはマスコミで「処女でないことが排除の理由」と大々的に報じられたことから「恥ずかしくて学校にも行けない」「体操の練習もしたくない」という状態に追い込まれていると報道されている。

 病院での検査で「処女であることが一応確認」されたものの報道の影響は深刻で、ある意味でシャルファさんは「マスコミによる報道被害」を被っている状況だ。そこで人権保護団体などが実態調査と支援活動に乗り出す構えをみせているという。

圧倒的多数のイスラム教の規範が優先

 インドネシアは世界第4位、約2億6000万人の人口のうち88%をイスラム教徒が占める世界で最も多くのイスラム教徒が住む国である。しかしながら宗教、民族、文化、言語などの多様性を認めることで統一国家を維持するため、マレーシアやブルネイなどと異なりイスラム教を国教とは規定しておらず、少数派であるキリスト教、ヒンズー教、仏教なども等しく認めている。

 しかし、近年イスラム保守派や急進派が圧倒的多数を背景に「イスラム教規範を半ば強制したり、暗黙の優先がまかり通ったりと宗教的少数派には厳しい状況」が生まれつつあるのも事実。

 インドネシアでは警察や軍隊に入隊を希望する未婚の女子は女医が2本指を膣内に挿入する形での「処女検査」が国際的人権団体やキリスト教組織の強い反対にも関わらず現在も続けられているといわれている。

 警察官の場合は「法を執行する職務の警察官が未婚で性体験を有するようではその資格がない」というのが処女検査の根拠とされているが、これも婚前交渉を禁忌とみなすイスラム教の影響が深く関係している。

 国立スポーツ協会、体操協会、青年スポーツ省はいずれも処女が理由の排除をこれまでのところ否定しているが、コーチとのやりとりで実際に何があったのか「詳細な調査を行いたい」としている。

 しかし当面は841人の大選手団を派遣し56競技中52競技にエントリーして熱戦を繰り広げている大会が開催中であることから「現在はフィリピンでの競技の支援に専念したい」としており、本格的な調査は大会閉幕後になりそうだ。