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(PanAsiaNews:大塚智彦)

 フィリピンのマニラ首都圏周辺一帯のルソン島で11月30日から12日間の予定で東南アジア諸国による国際競技大会「東南アジア競技大会(SEA GAME)」が始まり、各国のアスリートによる熱戦が続いている。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国に東ティモールを加えた11カ国の選手団約5500人が56競技530種目でメダルを目指して競い合っており、2020年の東京オリンピックに向けた前哨戦として盛り上がりをみせている。

 1959年以来2年ごとに開催されている「東南アジアのオリンピック」だけに各国のテレビ、新聞はマニラに特派員を派遣して自国選手の活躍を連日伝えている。

 しかしその一方でインドネシアではメダル競争や選手の活躍とは別の話題がニュースとなっている。それは17歳の女子体操選手が大会直前の合宿から強制排除される事件が起きたからである。

 女子選手の母親などによると強制排除の理由は女子選手が「処女でなかったから」というもの。これは「体操競技とは無関係の選手の極めて個人的なことであり、事実とすれば許されることではない」としてマスコミを中心に強い関心を集め、青年スポーツ省、インドネシア国立スポーツ委員会、体操競技協会や女子選手の出身地の州知事、政府与党関係者まで巻き込んだ論争に発展する事態となっているのだ。

「結婚前の性交はタブー」というイスラム教の規範

 当該選手を大会選手枠から外した体操競技のコーチは「強制帰国は素行に問題があり、競技への集中力が欠けていたため」として「処女か処女でないか」が理由ではないと主張している。しかし青年スポーツ省は「事実関係を調査してもし処女性が強制排除の理由であれば、人権問題であり放置できない」との立場を示している。

 女子選手は地元に帰還してから病院での医学的検査を受けた結果「処女である」との診断が下された。だがインドネシア国内ではいまだに「17歳の非処女は国際競技大会に出場する資格がないのか」との主張と、インドネシアの圧倒的多数を占めるイスラム教の「結婚前の性交は禁忌」との規範に照らして「やむを得ない」との考え方が対立。国民の間にイスラム教の規範に基づく考え方が根強いことも示している。

 過去にはオリンピックでバドミントンや重量挙げでメダルを獲得したこともある東南アジア域内きってのスポーツ大国インドネシアが今、女子選手の「処女性」を巡って揺れ動いているのだ。