「チップ」や「手袋」などユニークな減塩法も
ユニークな減塩法も開発されている。
慶應義塾大学の研究チームは「ソルトチップ」を開発した。わずかな塩分を含むチップを下の前歯の裏側に張り付けて食事をすると、チップから溶け出した塩分を舌が感知して、十分な塩分を感じられる。塩分が食品全体に含まれている必要はなく、舌の一部で塩味を感知すれば、塩味を感じることができるというメカニズムを利用した。塩分の一切含まれない料理でも、ソルトチップを付けておけば塩味を感じて、おいしく食事ができる。すでに市販もされている。
また、明治大学では、「食べ物の味を変える手袋」が研究されている。手袋の指の部分に電極が付いていて、これで食品をつかんで食べると、舌に電気刺激が与えられる。すると、塩味や酸味などの味を変えることができる。この手袋を使って塩味を感じさせやすくすれば、減塩した食事もおいしく食べられると考えられている。この手袋の実用化にはまだ時間がかかりそうだ。
生活習慣全般も見直したい
私たちの食生活に占める外食や加工食品の割合は多く、いくら家庭で塩分に気を付けても思うようには減塩できないという人も多い。すでにさまざまな減塩食品が市販されているが、本来の味とは異なるイメージがあり、なかなか手に取りにくい現状もある。減塩に取り組み、塩分摂取目標を達成するには、食品加工業者や外食産業の協力も必要だ。そこで、2019年11月に食品関連15団体で設立した加工食品食育推進協議会では、食塩の取り過ぎなどの問題にも取り組むという。
減塩への動きがますます加速されそうだが、塩分は生命を維持するために必要な物質なので、やみくもに減らせばいいというわけではない。また、1回の食事での塩分の摂り過ぎがすぐに慢性の高血圧につながるわけではない。特に塩分に注意しなければならないのは、すでに高血圧の人や、塩分に感受性の高い一部の人たちである。食塩の摂取状況や健康状態は個人差があるので、その人に合った適切な量を摂取する「適塩」を心がけるべきという説もよく聞かれる。
たしかに塩分の摂り過ぎはよくないが、高血圧の予防には、運動をする、タバコや酒を控える、野菜をたくさん食べるなど、生活習慣を見直すことも必要となる。健康な人なら、塩分を減らすことばかりに気を取られるのではなく、生活にも気を付け、食事を楽しもう。