英語のシャワーは意味がない
「読めばわかるような簡単な英語も聞き取れない」と多くの人が嘆きます。筆者自身、「読む」「書く」「話す」「聞く」のうち、もっとも難しく感じられたのは「聞く」ことでした。
中学、高校時代は、読んで訳す「訳読」が中心だったため、英語の音を聞く機会がじつに少なかったのです。「リスニング」の授業さえありませんでした。
英語が聞き取れないのは、「リスニングのトレーニングをやってこなかったからだ」と結論づけることができます。
逆を言えば、リスニングのトレーニングをやりさえすれば聞き取ることができるようになる、ということです。
そこで、リスニングのトレーニングを始めようと思い立つのですが、いろいろなやり方があって、あれこれ試行錯誤しているうちに挫折してしまう――こんな人がけっこうたくさんいます。
私自身の経験を言うと、リスニングの初期段階においては、英語を「シャワーのように浴びる」という学習法がもっとも役立ちませんでした。
知り合いにすすめられて、FEN(現在のAFN)放送をかけっぱなしにしておいたのですが、これがまったく役に立ちませんでした。たまに聞き取れる表現がポツポツあるだけで、リスニング力がついているという実感は得られませんでした。
英語の音に慣れることはできましたが、「聞きとれる」ようにはならなかったのです。
「音声に慣れること」と「音声内容を理解する」こととは、まったく別ものであるということを痛感したしだいで周りの人にもたずねてみたのですが、意味のわからない英語を「シャワーのように」浴びて、「聞き流す」だけで、「いつのまにかわかるようになった」などという話は、いまも英会話教材の宣伝以外では聞いたことがありません。
海外で生活をしている子どもなど、一部の例外を除けば、この方法はまったく効果が期待できません。
それどころか、「ムダな時間だった」とぼやく人のほうが圧倒的に多い。じっさい、「シャワーのように浴びる」学習法は、耳が英語に慣れるどころか、別にほかのことをやっていればその邪魔になるだけで、どちらにとってもきわめて効率が悪いのです。
だから最近では、「英語のシャワーを浴びないように」をリスニング指導の口ぐせにしています。意味のわかっている英文を意識的に聞かなければ、何回聞いても無意味なのです。