中世・ルネサンス時代にグレゴリオ聖歌から生まれたとされるクラシック音楽。長い年月を経て、時代とともに変わり続ける名曲、そしてあたかも遺跡発掘のように新たに再発見される数々の名曲。秋の夜半、レコードを聴きながら、音楽評論家の諸井誠氏とともに「名曲を生み出す条件」を検証してみてはいかがだろうか。(JBpress)
(※)本稿は『クラシック名曲の条件』(諸井誠著、講談社学術文庫)の一部を抜粋・再編集したものです。
名曲の条件
名曲には、『すぐれてよい有名な楽曲』といった辞典的説明を超えた条件がいくつかあるように思う。
一度耳にしたら絶対忘れられないメロディとか、心をとらえて離さないリズムとか、魅惑的な音色とか……。
そして名曲は、よく書けた完璧な楽曲である場合よりも、破天荒な何かをそなえたものであることの方が多い。
それだけに、同時代者からは批判をうけ、理解されなかったというケースも少なからずである。時をへて、やがて名曲となって歴史に名をとどめている古今の傑作のいくつかにふれ、名曲の条件を多角的に探ってみたいと思う。