著者が米海軍を辞めてまで本書を書こうとしたのは、「何をしでかすか分からないトランプ大統領の暴走を止めねば国益は守れない」という軍人として、一市民としての矜持だった。

 ただ、マティス氏やペンタゴン上層部も本書の出版には最後まで反対していたという。

 トランプ政権で国防・外交政策はどのように立案されているのか、大統領はどう関わり合いを持っているのか。

 その政策立案過程を国民に知らさねばならない。強い信念は変わらなかった。

 軍事機密保持の観点から国防総省は検閲、特定箇所の削除要求をしてきた。そうした制約があったにもかかわらず、本書にはトランプ大統領の国防・外交の歪みや誤りが鋭く指摘されている。

 伝聞や憶測ではない「ファーストハンド情報」(自らが直接見聞きした)が335ページに散りばめられている。

 今回は冒頭に取り上げたトランプ大統領の対韓国スタンスについて絞って取り上げたい。そこから透けて見えるトランプ氏の対日認識についても触れたいと思う。

同盟関係の意義を説くマティス長官を一蹴

 2017年7月20日、トランプ氏が大統領就任後初めて国防総省を訪れることになっていた。

 その直前、マティス国防長官、レックス・ティラーソン国務長官、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長らトランプ政権の外交・安保政策立案・実施の最高幹部が国務省に集まった。

 大統領向けの質疑応答要領を作成するための意見交換だった。

 ティラーソン長官はこう切り出した。