今や、米国民の怒りは弾劾を煽るメディアに向けられている。ラスムセン社の9月末の世論調査によると、ペロシ議長が弾劾調査の開始を発表した9月24日から数日後の段階で、全米有権者のなかで、弾劾の動きに関して「メディアに対して最も怒りを感じる」と答えた人が61%にも達した。

 同じ調査によると、有権者のうちトランプ大統領に対して怒りを感じる人は全体の53%を占めたが、民主党への怒りを表明した人も全体の49%を占める。民主党にとっても大統領弾劾への動きは諸刃の剣なのである。

民主党が打撃を受ける可能性も

 さらに注目されるのは、民主党が被る損害である。

 民主的な選挙で選ばれた大統領を政治的な動機で糾弾し解任しようとする弾劾措置への反対は、米国民の間で従来から根強かった。だからこそ民主党のペロシ―議員は、昨年11月の中間選挙前も、「ロシア疑惑」が高まったそれ以前の時期でも、弾劾への動きには一貫して反対してきたのだ。もしも今回の弾劾措置に対してトランプ大統領が上院の支持を得て勝利を宣言したとき、同大統領への支持がさらに高まり、民主党への支持が減るというシナリオは十分に考えられる。

 さらにもっと確実な展望として、今回の「ウクライナ疑惑」を理由とする弾劾手続きが、民主党側の大統領選の先頭走者であるバイデン氏への支持を大きく減らすことも予想される。バイデン氏には、オバマ政権の副大統領だったとき自分の息子の疑惑に関連して、ウクライナ政府に圧力をかけたという情報が流れている。トランプ氏への「ウクライナ疑惑」への調査に関連して、その疑惑が改めて浮上してしまう危険性はたぶんに考えらえる。だからこそ今回の弾劾に関しては、「バイデン氏を大統領選から追い落とすための陰謀」という説も流れているのである。

 日本としては、連日報道されているトランプ大統領の「ウクライナ疑惑」を、複層的、重層的な視点からみておくことが必要だろう。