民主党側が弾劾開始の理由として冒頭で提示したのは、今年(2019年)7月25日のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談に関する、CIA(中央情報局)職員とされる匿名の内部告発者の申し立てだけだった。

 この申し立てによると、トランプ大統領が電話でゼレンスキー大統領に、政敵であるジョセフ・バイデン前副大統領の息子が関わるウクライナ企業の不正行為を捜査するよう要請し、米国からウクライナへの軍事援助を交換条件にした、としていた。しかしその内部告発者は、「私はこの情報を直接、自分で得たのではなく、同僚との会話で知った」と述べている。

 これに対してトランプ大統領はゼレンスキー大統領との電話会談の記録を公表し、「バイデン氏の息子への捜査について話したが、ウクライナに対する圧力も交換条件もなかった」として、民主党側の弾劾への動きを「政治目的のための魔女狩りだ」とはねつけた。

メディアが拡散する真偽不明の情報

 下院は弾劾調査の手始めとして、10月3、4日の両日、非公開の秘密聴聞会を開いた。関連の委員会がこの「ウクライナ疑惑」の関係者2人を召喚し、事情を聴取したという。だがその内容は一切明らかにされていない。共和党側はこの動きに対しても、「民主党は弾劾の政治的な動機をみせたくないために、すべての手続きを秘密にしている」と非難し、関連情報の開示や聴聞会の公開を求めた。

 民主党は、トランプ大統領の「特定事件の捜査を外国政府に要請することの違法性」を主張する。だが共和党側は、元CIA職員のロン・アレド氏の「トランプ大統領がウクライナ側に要請したとされる特定の犯罪疑惑への捜査は、CIAが他国の政府機関や情報機関に恒常的に実施しているルーティンの作業であり、違法性はない」という証言を引用して反撃している。