通常、思考や行動は「積み上げ型」で行われる。“今、自分がやっていること”“自分ができること”から次にやることを発想するのだ。しかしそれは自分を現状に縛り付ける行為にほかならない。榊原は「世界にはスタートアップが必要」と考え「なら、こんな形でスタートアップを支援しよう」とビジョンを描き、それを実現したのだ。
さらに榊原氏は「サムライファンド」を立ち上げ、一緒に働く起業家を財務面でも支援し始めた。
ファンドはお金を集めれば立ち上げられるわけでなく、金融庁の審査が必要になるなど、手続きは非常に煩瑣(はんさ)。しかし、彼はこの飛躍も実現した。
こうして榊原氏は類のないファンドをつくり上げた。何の実績もないシーズ段階のスタートアップにオフィスを提供し、一緒に暮らすほどの距離感で寄り添うように育て、投資も行う事業だ。そして、彼が支援・出資した会社のうちの2社が成長し利益を手にすると、彼は起業相談も増えたことから「この資金を使ってさらに起業家に還元をしよう」と決意する。こうして榊原は、「サムライハウス」の約5倍の大きさの起業家向けコワーキングスペース「サムライスタートアップアイランド」を天王洲アイルに創設した。
問題は、考えたことを「やるかやらないか」
次に筆者が面白いと感じたのは、榊原氏の“鍵のありかを見抜く能力”だ。例えば構造物には「これが折れたらすべてが壊れる」ような支柱がある。彼はそんな何かを見抜いた上で飛躍を遂げるのだ。