派閥の人数で点検する
2021年9月に想定されている自民党総裁選に目を移す。もちろん安倍首相が4選を目指して実現させるというシナリオもあり得るが、現在まで本人は「3選まで」と発言しているので、4選は現実的には考えにくい。
となると、まず注目すべきポイントは、安倍首相の出身派閥で、党内最大派閥の細田派(97人、清和政策研究会)がいったい誰を擁立・支持するのか、だ。これは、すべて安倍首相の意向に委ねられるだろう。空前絶後の長期政権を築いた現職首相が後継者選びに口すら出さない、もしくは、何もしないということは考えにくい。かなりの確率で、誰かを後継指名するはずだ。
では、安倍首相は誰を後継にするのか。真っ先に検討すべきは当然ながら細田派所属議員になる。細田派には、下村博文選挙対策委員長、萩生田光一文部科学相、西村康稔経済再生相らがひしめいているが、残念ながら総裁候補としては物足りない。
すると、他派閥の有力候補を担ぐかどうかに焦点が移るが、これは派閥同士の関係の深さが大事になってくるので提携先は限られてくる。かつて田中角栄と大平正芳が盟友関係を結んだように、安倍首相と麻生太郎財務相が手を組み、麻生派(54人、志公会)の総裁候補である河野太郎防衛相を推すことはシミュレーションに入れてもいい。
ただし、数の上で圧倒的に有利な細田派が、麻生派の候補者を応援するかどうかは微妙なところだ。細田派、麻生派、それぞれが乗りやすい〝中間的〟候補者が必要になる。
一方、岸田派(46人、宏池会)の領袖・岸田文雄党政調会長は、有力な総裁候補だ。麻生派はもともと岸田派、すなわち宏池会を源流としており、しばしば両派が大同団結した「大宏池会」構想が取り沙汰される。岸田氏が両派の統一候補になることは予測の選択肢に入れるべきだろう。
しかし、仮に両派が組んでも、数的には細田派をわずかに上回っているにすぎない。また、細田派が、思想的にも派閥力学的にも宏池会に協力するのは容易ではない。
党内第3派閥の竹下派(53人、平成研究会)は、2人の「準」総裁候補を抱えている。いずれも安倍首相に近い加藤勝信厚生労働相と茂木敏充外相だ。2年後、2人が名実ともに「準」が取れて総裁候補になっていることはあり得るが、細田派、麻生派、岸田派のいずれかが協力するかどうかでみると、疑問符がつく。
自民党の衆参国会議員数は398人。このうち345人、約87%が派閥に所属している(派閥的要素を持つ「谷垣グループ」含む)ことを踏まえると、派閥の合従連衡がカギになる。当然、合従連衡の中心は細田派である。なお、党員投票は「小泉旋風」級のブームが起きない限り、波乱要素にはならない。