この警告は、ワシントンの安全保障研究機関「戦略予算評価センター(CSBA)」が2019年8月に作成した「インド太平洋における中国の多様な闘争」と題する調査報告書に明記されていた。

 報告の筆者は、米国海軍大学教授を10年ほど務め、現在はCSBA上級研究員のトシ・ヨシハラ氏である。中国の海洋戦略研究では全米有数の権威とされる日系米人学者だ。

 ヨシハラ氏はこの報告で、「武装艦艇を含む中国公船が日本側の領海、接続水域にほぼ恒常的に侵入することにより、中国は尖閣の事実上の施政権を獲得し、日本政府の『領有権紛争は存在しない』という主張を骨抜きにしつつある」と指摘した。

尖閣攻撃に備えて基地を建設?

 ヨシハラ氏は中国の対尖閣戦略を「威圧態勢」と呼ぶ。同報告書の、主に「尖閣諸島への中国の威圧態勢」というパートの中で、その特徴を次のように述べている。

・中国は軍事、非軍事の多様な手段で尖閣の主権を主張し、最近では日本の領海へ1年間に60回、接続水域に1カ月に22回という頻度で侵入し、ほぼ恒常的な侵入によって事実上の施政権保持を誇示するようになった。

・中国は海軍、海警、民兵、漁船の4組織で尖閣への攻勢を進め、その侵入のたびに自国の領海領土の正当な管理行動として政府機関のサイトや官営ディアの報道で記録を公表し、支配の実績の誇示を重ねている。

・中国は尖閣侵入の主体を准軍事組織の海警としながらも、海軍艦艇を付近に待機させ、ときには原子力潜水艦やフリゲート艦などを接続水域に送りこんでいる。また、日本の自衛隊の艦艇やヘリに、実弾発射の予備となるレーダー照射を2回実行した。

・中国は近年、尖閣から300~400キロの浙江省の温州、南麂島、福建省の霞浦に、それぞれ新たな軍事基地や兵站施設を建設した。いずれも尖閣への本格的な軍事攻撃の能力を画期的に高める効果がある。