2019年10月31日までに、必ず欧州連合(EU)から離脱すると確約している英国のジョンソン首相。離脱後のEUとの関係を無視した、いわゆる「合意なき離脱」に与党の穏健離脱派や野党から批判が集まっている。そんな折、批判を封じるために、ジョンソン首相は「議会閉会」という異例のカードを切った。このまま議論を尽くさずに、英国はEUを離脱することとなるのか。(JBpress)
(※)本稿は『イギリスの失敗』(岡部伸著、PHP新書)より一部抜粋・再編集したものです。
混乱を見据え、予算を計上
ジョンソン首相は、EUが離脱案の再交渉に応じなければ、「合意なき離脱」に踏み切ると述べ、側近のマイケル・ゴーブ国務相は、「極めて現実的な可能性」として、準備を進めている。
ジャビド財務相は7月31日、「合意なき離脱」に備えて新たに21億ポンド(約2800億円)の追加予算を用意することを表明した。11億ポンドを重点分野に充てるため、即座に支出。残り10億ポンドは、必要に応じて投入する。
関税の発生や通関手続きで混乱が予想される国境周辺の職員の増強、国民への周知徹底費用に充てる。医薬品や医療用品の欠品が生じないよう、輸送や備蓄の強化にも投じる。