(舛添 要一:国際政治学者)
6月7日に辞任したメイ首相の後任を選ぶ保守党党首選挙で、大方の予想通り、ボリス・ジョンソン前外相がハント外相に圧勝して新党首に選出され、24日には首相に就任した。
メイ首相については、彼女なりにEUとの厳しい交渉を続け、国内の様々な意見を取り入れた上で妥協を図ろうと全力を挙げたことは否めない。しかし、まとめ上げた離脱案は、悉く議会で葬り去られてしまった。その点をもって彼女の政治力の欠如だと指摘する声が大きいが、ジョンソン首相なら国論の分裂を修復できるのか、それだけの政治力があるのかと問うと、懐疑的にならざるをえない。
過激なEU離脱論は「首相ポスト獲得」のため
25日、ジョンソン英首相はEU離脱強硬派を主要閣僚に据える組閣をした。ラーブ前EU離脱担当相を外相に、パテル元国際開発相を内相に、ジャビド内相を財務相に任命した。バークレイEU離脱担当相は留任させ、下院院内総務にリースモグを起用した。いずれも強硬派である。さらに、国民投票の際に離脱派キャンペーンを主導したドミニク・カミングスを首相上席顧問に登用した。
こうして発足したジョンソン政権であるが、前途は多難である。
私は都知事として、ロンドン市長のボリス・ジョンソンと一緒に仕事をした。型破りの男であるが、愉快な人物であり、友人として付き合っていて不愉快なことはなかった。
市長として2012年ロンドン五輪を成功させた実績があり、庶民風を装うパフォーマンスや、ラジオ番組などに出演してタレント並みの人気を博してきた。私と会うときも、ボサボサの髪で背中にリュックサックを担いでやってくる。イギリスの政治家の中で、国民から「ボリス」とファーストネームで呼びかけられるのは彼だけである。
また、市長時代にレンタルサイクルを導入し、これが「ボリス・バイク」と呼ばれて市民の足となっている。私もボリス・バイクを参考にして東京にシェア・サイクルのシステムを普及させた。