インドのモディ首相、2期目スタート 総選挙で歴史的勝利

インド・ニューデリーの大統領府で行われた就任式に出席したナレンドラ・モディ首相(中央、2019年5月30日撮影)。(c)PRAKASH SINGH / AFP〔AFPBB News

 カシミール地方の紛争といっても、日本人には馴染みがないかも知れない。

 カシミール紛争は、1948年に英領インド帝国からインドとパキスタンが独立した際にどちらもカシミールの領有権を主張したことに端を発している。どちらも領有権を譲らないなか、両国はカシミールをめぐって第一次印パ戦争に突入した。その後、カシミールはインド側とパキスタン側に二分され、現在までその状況が続いている。

過激派との遭遇をでっち上げて誘拐や殺人

 また「カシミール紛争」と言えば、基本的にインド側で起きている争いを指す。なぜなら、ジャム・カシミール州の夏の州都スリナガルとその周辺が、このカシミール紛争の「主戦場」となっているためだ。そのスリナガルが争いの舞台になる理由は、住民のほとんどがイスラム教徒であり、その地域をインド政府が自治権を与えながら強硬支配していることにある。

 もちろんパキスタンもここに絡んでくる。「イスラム教国として、カシミールを救う」という大義で、パキスタン軍がテロ組織などを支援して、カシミール地方を混乱に陥れようとしている。それによって、インドがカシミールを手放すよう仕向けようとしているわけだ。

 それに対してインドは、インド中央予備警官隊(CRPF)や準憲兵部隊をスリナガルやパキスタンとの国境(実効支配線=仮の国境線)地域などに派遣し、常に街中には武装したインド人隊員を配置し、住民を監視させている。さらに1990年には、「軍事特別法」と呼ばれる法律を施行し、カシミールに駐留する部隊の権限を大幅に拡大した。逮捕だけでなく、殺害すら、法的な手続きなしでも行なえるようになっており、これがインド部隊によるカシミール住民への犯罪行為の温床になっている。

 その所業はあまりにもひどい。

 例えばこうだ。「軍事特別法」により、「フェイク・エンカウンター」と呼ばれる事件が頻発するようになった。フェイク・エンカウンターとは、「偽りの遭遇戦」だ。つまり、インド部隊が過激派などとの戦闘を「でっち上げる」行為を指す。過激武装勢力と遭遇したことにして、それを隠れ蓑に、カシミール人を狙った誘拐や殺人などが発生しているのだ。

 元インド軍少将のV・K・シンは、この「フェイク・エンカウンター」について、「過激派を何人殺害したかで兵士や部隊員の評価や勲章に繋がるために、軍や警察が偽りの遭遇事件をでっち上げる危険性がある」と指摘している。それくらいインド部隊にとって、「フェイク・エンカウンター」は誘惑的行為なのだ。